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「場当たり的な医療制度は終わり」――ビッグデータを活用し「先制予防」へ:モバイルヘルス講演リポート(1/2 ページ)
遺伝子情報やバイオマーカー、日常生活のデータから「先制予防」を行おうとする「モバイルヘルス(mHealth)」の研究が進んでいる。「健康医療データ信託銀行」の登場も予測される同研究の今を東北大学の田中博氏が紹介した。
2015年10月26日、「ウェルネスライフサポートフォーラム」が東京都内で開催された。同フォーラムは、高齢化社会の情報基盤やモバイルヘルスを中心とした勉強会で、今回が第1回目の開催となる。
基調講演には、同フォーラム発起人で東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 機構長 特別補佐の田中博氏が登壇。「モバイルヘルス(mHealth)時代における参加型医療・ケア」をテーマに講演した。
「変化」が迫られる医療
まず田中氏は、日本医療の歴史を高度成長期から振り返りつつ、疾病構造の変化について解説した。過去と現在の大きな違いは、糖尿病などの「慢性疾患」が急増したことにあるという。
「1954年から1991年まで、日本は若い層の方が多い国だった。患者が病院に駆け込む理由といえば、突然病気にかかる“急性期疾患”がほとんど。それを各病院の中で治療、1つの場所で完結するという体制が主流だった」(田中氏)。
しかし、高齢化に伴い糖尿病、高血圧症などの「慢性疾患」が増加。これらの病気の引き金となるのは、“生活習慣”だ。これまで急性期患者の治療に主眼を置いてきた医療制度は、長期治療や先制予防が余儀なくされるこの状況にそぐわなかった。医療従事者の不足も重なったことから、地域医療は収縮を迫られ、患者の「重症化」につながっていったという。
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