「ぶつからない」と言い切ったアイサイトが日本の運転支援システムを変えた:いまさら聞けない 電装部品入門(24)(3/3 ページ)
2009年まで、日本では衝突する前に完全に停止する自動ブレーキが法規制で認められていなかったが、今や部分的ながら自動運転システムも利用されるようになった。自動運転の前段にある運転支援システムを、前後編に分けて紹介する。前編は、クルマがぶつからないための技術だ。
ぶつからないためにクルマがやっていること
運転支援システムの代表的存在と言えば、言うまでもなく衝突未然防止システムですね。衝突を未然に防ぐという目的を達成する上で真っ先に把握しておきたいのは、各速度域からフルブレーキで完全停止に至るまでに必要な距離です。
この停止距離が全ての基準となり、自動車側で何らかのアクションを起こすか否かの判断を行います。
アイサイトの場合は、2個のカメラを持つステレオカメラで前走車との距離、自車との速度差を認識しています。それ以外のシステムの場合、レーダーによって前方にある障害物との距離と速度差を認識し、カメラを組み合わせたシステムではカメラで障害物が何かを認識します。
前走車や壁、障害物との距離や速度差から「このままの状態で進むとあと●秒で衝突する」ということは単純に計算できますが、基本的にドライバーによる回避操作(ブレーキ操作)が行われる可能性がある距離の場合は、衝突未然防止システムが介入することはありません。
しかし「そろそろブレーキを踏まないと危ないよ!?」という距離に近づくと、衝突未然防止システムは音、警告ランプの点滅、シートベルトを断続的に引き込むといったインフォメーションで危険な距離になったことを警告します。
それでもまだ回避操作が行われず「もうこれ以上近づくと確実に衝突する」と判断した場合に、いよいよ衝突未然防止システムが大きく介入することになります。
システムが介入する時、ドライバーが全く何の操作もしなかった場合はとにかく機能限界までシステムによってブレーキをかけます。基本的には前方障害物から1m以内に止まるように設定されています。
警告によって、ようやくドライバーのブレーキ操作が行われた場合、ドライバーがブレーキを踏み込むのを支援する形でシステムによる制動が加算され、機能限界のブレーキレベルを実現します。
人によって運転の癖というものがあるのは皆さんご存じだと思いますが、その癖の1つがブレーキを踏むタイミングです。本人に自覚は無くとも、ギリギリまでブレーキを踏まない方が意外と多くいらっしゃるのですが、そういった方が衝突未然防止システム搭載車を運転すると「ブレーキを踏もうとしているのに、車が頻繁に音と光を出して警告してくる」といったことが起こります。
しかし、こうしたドライバーは、センサーを用いて前方の障害物との距離と速度差を測った結果、もう危険領域に入ったとコンピュータが判断せざるを得ないタイミングまでブレーキを踏んでいない証拠です。
……という解説を冷静に行なっている私自身も、実は頻繁に警告されるタイプです。
次回は、運転支援システムの後編として、自動ブレーキ以外にドライバーを助ける機能を解説します。お楽しみに!
筆者プロフィール
カーライフプロデューサー テル
1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。
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