熊本地震の通行実績情報はなぜ3種類あるのか:車載情報機器(2/2 ページ)
熊本地震のような災害発生時に道路が通れなくなることで、救助車両や救援物資を輸送するトラックなどの移動が妨げられる可能性がある。そこで、トヨタ自動車、ホンダ、ITS Japanからそれぞれ、“通れる道路”の情報である通行実績情報が提供されている。
地震発生直後の通行実績情報はITS Japanに一本化すべきでは
通行実績情報が広く知られるきっかけになったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災のときだ。広域で多くの道路が通れなくなり、クルマを使った移動に大きな影響を与えた。
そこでホンダが地震発生翌日の2011年3月12日から提供を始めたのが、インターナビのプローブ情報を用いた通行実績情報マップだ。それから遅れること5日の同年3月17日からは、トヨタ自動車も通れた道マップの提供を始めた。そして、3月23日からは、ホンダとトヨタ自動車だけでなく、日産自動車とパイオニアのプローブ情報を集約した通行実績情報がITS Japanを窓口として提供されるようになった。
トヨタ自動車はその後も通れた道マップのWebサイトを常設しており、いつでも通行実績情報を確認できる状態にあった。今回の熊本地震では、通れた道マップのWebサイトを開くと最初に熊本市の情報を表示するように変更を加えた。
ホンダは大規模災害時のみ通行実績情報を提供する方針で、今回の熊本地震でもその方針にのっとりGoogleとヤフー、国土交通省、警察庁に情報提供している。ただし、「大規模災害時」の判断は、震度などで定めているわけではなく、災害ごとに決めているという。
ITS Japanは、震度6弱以上の地震の場合に情報を提供することを定めている。また、風水害、火山活動、土砂崩れなどの広域災害で、内閣府に非常災害対策本部が設置され、広範囲の道路交通に支障がある広域的な災害であると判断したときは、個別に対応するとしている。
今回のように、地震発生直後から通行実績情報が得られるようになっていることは、東日本大震災のときを考えれば悪いことではない。しかし、より正確な通行実績情報が求められている地震発生直後については、豊富なプローブ情報が集積されているITS Japanに一本化するような仕組みが必要ではないだろうか。
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