新型「Eクラス」のレベル2自動運転機能は「モデルS」より“安心”:ダイムラー 新型Eクラス インプレッション(3/4 ページ)
「W120/121」から数えて10代目となるメルセデス・ベンツの新型「Eクラス」は、かつてないほどに大幅な進化を遂げた。レベル2に相当する自動運転機能はドライバーに安心感を与えるような仕上がりになっていた。
「ギクシャク感がなくなった」プラグインハイブリッドモデル
新型Eクラスの外観は、SクラスやCクラスと共通したクーペ風のスタイリングだ。「スターダスト・エフェクト」なる加工できらきら光るリアランプや、64色のカラーが選べるアンビエントライトなど、華やかな装備が備わる。全体にスポーティーな印象を受けるのは、全長が従来比で43mm増の4923mmに延長されたが、ホイールベースは同65mm増の2939mmに伸長されたことで、オーバーハングが短くなっているためだろう。
当初導入されるパワートレインのうち、ガソリン3機種の最上級モデルは四輪駆動システムとの組み合わせだけとなる。これらの他、ガソリンハイブリッド1機種とディーゼル2機種が用意される。これらのうち最も日本市場で注目されるだろうプラグインハイブリッドシステムを積んだ「350e」を試乗した。ダイムラーの自社製9速ATとプラグインハイブリッドシステムの組み合わせは今回が初めてだ。排気量3l(リットル)のV型6気筒エンジンに、Robert Bosch(ボッシュ)と共同開発した電気モーターを組み合わせて、システム全体で最高出力286HP(210kW)/最大トルク550Nmを発揮する。電池の電力とモーターだけで走行するEV走行距離は30kmで、燃費は100km当たり2.1lと良好だ。CO2排出量も49g/kmと、2020年の欧州委員会の目標値を達成している。
350eが、アクセルペダルを踏んだ瞬間にモーター駆動らしい鋭い加速をみせる。特に、高速道路への合流や、ラウンドアバウトへの侵入では、電気モーターによる瞬発的な加速がありがたい。必要な速度に達してしまえば、エンジン回転数を1500rpm以下に押さえて粛々と走る。エネルギー回生の頻度も高く、アクセルペダルを少しでも緩めたり、坂道に差し掛かったりすれば、すぐに回生に転じて電池パックを充電する。同社の既存のハイブリッド車と比べると、走りは格段にスムーズになった。協調制御が熟成されて、ギクシャク感がなくなったようだ。自社製9速ATもビジーに感じることはなく、むしろ、エンジンとモーター、両方の得意分野を引き出している印象だ。
一方、シャシー性能の高まりも特筆すべき点だ。ボディの剛性感が高まったことに加えて、各部の取り付け剛性を高めているため、ドライバーには非常に安定した印象が伝わってくる。さらに、電子制御式連続可変のダンピングシステムの「ダイナミック・ボディコントロール」、複数のチャンバーを持つエアサスペンションがオプションで装備されており、大きな入力に対しても、瞬時に姿勢を立てなおしてくれる。
排気ガス不正問題で渦中のディーゼルエンジンをあえて新開発
もう1台、日本市場での注目を集めそうなのが、新型の排気量2lディーゼルエンジンOM654を搭載した「220d」だ。フォルクスワーゲンが北米で起こした問題の影響で、日本でもディーゼルエンジンへの風当たりは強い。しかしダイムラーでは、あえてこの時期に26億ユーロをディーゼルエンジンの開発に投資し、WLTPとRDEという次世代の燃費および排ガス基準に適合するエンジンを開発したのだ。
そして今後、モジュラー戦略にのっとって全てのエンジンを新型に切り替え、ディーゼルの間では約60%、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの間では約50%の部品共有化を進める方針だ。このユニットでは、エンジンブロックをアルミ製、シリンダーはプラズマ加工を施した鋳鉄とすることで、耐久性と軽量化を両立した。さらに、触媒、尿素SCR(選択触媒還元)システム、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)などの後処理装置を一体化し、エンジン近傍にモジュール化して搭載した。エンジン始動の直後から触媒や後処理装置に高温の排気ガスを送り込んですぐに機能させることができるという。
実際に試乗してみると、OM654は低回転域から高回転域までディーゼルエンジンとは思えないほど滑らかなトルクを発揮する。従来のディーゼルエンジンでは、ターボで過給して低速トルクは充実させていたが、高回転域での頭打ち感があって、ガソリンエンジンの軽快さにはかなわなかった。しかしOM654では、先代ユニットと同じ最大トルク400Nmを維持しつつ、最高出力195hp(145kW)と約100hp/lに手が届きそうな高出力エンジンに仕立てあげた。大幅に軽量化すると同時にフリクションロスを減らしたことで、高回転域までスポーティに走れるという副次的効果が生まれた。注目の燃費は、100km当たり3.9l。CO2排出量はわずか102g/kmにとどまる。現行の欧州の排気ガス規制であるEuro6をクリアすることに加え、Euro6の次世代基準やRDEも見据えた設計だ。
エントリーモデルとなる排気量2lガソリンエンジン「E200」に加えて、出力を最高出力245hp(183kW)/最大トルク370Nmに強化した「E300」もラインアップされる。ただし日本に導入される際には、排気量は2lのままだが出力が変わって「E250」となる予定だ。
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