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新型「Eクラス」のレベル2自動運転機能は「モデルS」より“安心”ダイムラー 新型Eクラス インプレッション(2/4 ページ)

「W120/121」から数えて10代目となるメルセデス・ベンツの新型「Eクラス」は、かつてないほどに大幅な進化を遂げた。レベル2に相当する自動運転機能はドライバーに安心感を与えるような仕上がりになっていた。

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全て次世代になったセンサー類

 試乗に向かう前に、気になる技術の詳細から解説しよう。先んじて高度運転支援システムを搭載したSクラスや「Cクラス」と比べると、ステレオカメラ、ミリ波レーダー、レーザーレーダーなどのセンサー類は全て次世代になった。

新型「Eクラス」に搭載されているセンサーの数々
新型「Eクラス」に搭載されているセンサーの数々(クリックで拡大) 出典:ダイムラー

 例えば、ステレオカメラに関しては、SクラスはContinental(コンチネンタル)製だったが、新型EクラスではMobileye(モービルアイ)製となっている。この分野は日進月歩であるが故に、1つのサプライヤを決めて全てを供給するという手法をDaimler(ダイムラー)では取っていない。中でも検知のアルゴリズムはノウハウの塊なので、全て自社で開発し、今後も社内で開発する予定だ。

 「インテリジェント・ドライビング・コントローラ」と呼ばれる統合システムは、部品サプライヤが重要なのではなく、中身のアルゴリズムが重要だ。ただし、そのアルゴリズムを処理する演算能力などの要求特性が重要なので、半導体についてはティア2サプライヤではあるものの、直接要求などを伝えている。現状、ミリ波レーダーについては、夜間や悪天候でも使えるといった特徴を尊重して使っており、レーザースキャナー(ライダーとも)は10〜15年後の完全自動運転の時代に必要と考えて検討している。

 もう1つ気になるのが同じレベル2の自動運転を2015年末にテスラが投入した際の認証の課題だ。ダイムラーでは、米国や日本などについては事前申請によって進めており、欧州については地域全体を包括的にカバーする形での交渉を行っている。ただし、地域ごとに認証に違いがあり、例えばドイツで登録した車両は自動でのレーンチェンジが可能だが、試乗会が開催されたポルトガルで登録すると、レーンチェンジを自動ではできないといった差がある。

自動縦列駐車をスマートフォンで操作

 試乗車のキーを受け取る際に、スマートフォンも一緒に手渡された。新型Eクラスでは、スマートフォンがスマートキーになっており、ドアの開閉やエンジン始動だけではなく、Bluetoothで通信することによって、車外から遠隔で自動駐車を行える。セキュリティ面での不安を感じるかもしれないが、スマートフォンと通信する際には、当然カギを持っている人とクルマが一定の距離内にいるときだけスマートフォンとつながる仕組みになっている。

 操作はとてもシンプル。スマートフォン上でアプリを立ち上げて、ガイドに沿ってクルクルと画面上に円を描くとBluetoothでクルマと通信してつながる。そのまま円を描き続けると、車庫から自動でクルマが出てくる。車庫内に障害物がある場合には、自動でハンドルを切って避ける。広いところに出た段階で、ドアを開けて運転席に乗り込むと、ズボンの裾を汚したり、スカートの裾をひっかけたりする心配がない。

スマートフォンを使った車庫出しのイメージスマートフォンを使った車庫出しのイメージ スマートフォンを使った車庫出しのイメージ(クリックで拡大) 出典:ダイムラー

 運転席に座ったまま、今度は自動駐車のデモを体験する。徐行の状態から駐車できるスペースが見つかると、青いPのマークがメーターパネルに現れる。そこでいったん停車してから自動駐車の指示をすれば、縦列駐車でも、後方からの車庫入れでも、完全に自動で行える。ステアリングの操作からブレーキまで全て自動だ。自動で車庫出し/車庫入れができる機能はBMWの「7シリーズ」にも導入されているが、新型Eクラスのようにドライバーが運転席に座った状態での車庫入れはできない。

 新型Eクラスが初採用ではないが、ダイムラーの安全への思想が分かる機能として特筆すべきなのが「アクティブ・レーンキープ・アシスト」だ。走行中に走行車線をはみ出したときに、ステアリング操作ではなく、自動ブレーキによって車両を走行車線内に戻す機能である。走行車線をはみ出しているとき、ドライバーはそのことを意識していないことが多い。そこで自動のステアリング操作によって走行車線内に戻ろうとすると、ドライバーはそれに驚いて逆側にステアリングを切ろうとする。この人間の習性に配慮し、ドライバーが気付かないように車線からはみ出している側と反対のブレーキを自動でかけて、車両の進行方向を修正するという、人間工学に基づいた機能になっている。

 一通りの機能を体験した後は、いよいよ公道での半自動運転の体験に移ろう。はじめにレクチャーを聞いたとき「責任はあくまでドライバーにある」と注意を受けた。この半自動運転機能は、クルーズコントロールのノブを操作すると起動し、方向指示器を操作するとその方向に障害物がない場合に自動でレーンチェンジを行う。これは、NHTSAの規定に従うと自動運転のレベル2に分類できる。

 半自動運転が起動すると、緑のハンドルマークがモニターに表示される。ポルトガルの道はところどころ荒れていて、白線が読み取りにくい場合など悪条件下では動作しないこともあった。半自動運転の中核となる「ドライブパイロット」は、白線内を走行しながら、先行車両に自動で追従し、先行車両が止まれば完全停止して、アクセルを踏めば再始動する。しかしながら、白線内を走るための補正する程度の自動ステアリングは、Cクラスや富士重工業の「アイサイト」でも既に導入されている。

「ドライブパイロット」の機能
「ドライブパイロット」の機能(クリックで拡大) 出典:ダイムラー

 新型Eクラスで新しいのは、方向指示器を点灯した方向に自動でレーンチェンジする「アクティブレーンチェンジアシスト」だろう。また、交差点を横切る車両や歩行者を検知をした場合には、完全停止まで自動でブレーキをかける。これは、従来の「アクティブブレーキアシスト」に交差点での衝突回避機能が追加されたことを意味する。加えて、欧州の予防安全アセスメントであるEuroNCAPで2018年から投入される予定の自転車検知機能も備えている。

「アクティブレーンチェンジアシスト」の機能
「アクティブレーンチェンジアシスト」の機能(クリックで拡大) 出典:ダイムラー
交差点での衝突回避機能が追加された「アクティブブレーキアシスト」
交差点での衝突回避機能が追加された「アクティブブレーキアシスト」(クリックで拡大) 出典:ダイムラー

 読者が最も気になるのは、テスラが世界で初めて「モデルS」に投入した半自動運転機能との違いだろう。正直なところ、モデルSは先行車両に徹底的に付いていき、白線内もしっかり保って走るのだが、時々ぎょっとするようなステアリング操作をすることがある。安全なことは分かっていても急激にGを発生させるため、つい手がステアリングを握りしめてしまう。対する新型Eクラスでは、ヨーを発生させてスムースに曲がるので、安心してクルマに運転を任せられる。安全なだけではなく、ドライバーに安心感を与える点が最大の違いと言っていいだろう。

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