設計者によるPDM導入と生産管理システムの再構築:3D設計推進者の眼(8)(3/3 ページ)
機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回はPDMと生産管理システムの関係やその問題について語る。
PDMと生産管理システムの再構築
生産管理システムとPDMシステムの関係とはどんな感じなのでしょう。
まずPDMシステムは設計の最終成果物を管理するシステムです。このシステムで最終成果物としてのE-BOMが作成できます。このE-BOMは、生産管理システムで管理するBOMに受け渡す必要があるので、設計者はこの2つのシステムを一方通行で使用しなければなりません(「一方通行」という部分には更に考えがありますが、ここでは割愛します)。
その受け渡しの作業では、E-BOMの情報を間違いなく受け渡す必要があります。そのため、生産管理システムの内容にまで首を突っ込みざるを得なかったのです。よってPDMシステム構築の延長線上に、「生産管理システムの再構築」というテーマが見えてきたのです。
生産管理システムの再構築においては、RFP(提案依頼書:Request For Proposal)を作成しました。先ほどお話しした要求事項他をこれにまとめ、生産管理システムメーカーに具体的な提案をお願いすることをするための作業が、RFP作成になります。生産管理システムメーカーはRFPに基づいたプレゼンテーション、資料提出を行います。
そのプレゼンテーション内容と提出資料に対して定量的な評価を行い、最終的な選定を行っていきます。このRFPは、発注後に仕様を確認していく要件定義においてもベースになり、この精度も高まることになります。
生産管理システムの選定と導入の留意点
最終的は、統合化部品表の流れを組む、BOMベースの生産管理システムを選定しました。この生産管理システムからは非CADユーザーからこのM-BOMから図面や3Dモデルも参照することが可能です。
これによって全社でモデルを参照する仕組み、以前もお話しした「3Dモデルを徹底的に使い倒す仕組み」のための参照環境が作れることになります。
このような生産管理システムを導入する際に私は、「パッケージに業務を合わせる」「カスタマイズに頼らない」と考えます。
これまでの仕事のやり方を何も変えずにシステムを構築するのであれば、作りこみとなるスクラッチ(Scratch)となり、システム開発をゼロから作り上げる必要があります。
この場合、要件定義を行うにも長時間要し、開発期間も要します。このため、導入コストは上がります。スクラッチ導入後に、オペレーションシステム(OS)が変わった場合には、その都度修正対応の可能性は大きいものになります。簡単に変えることのできない会社の基幹システムでもある生産管理システムにスクラッチを採用することは望ましくないと私は考えます。
一方、パッケージは標準的なものを目指して、拡張性を持ち合わせながら作られています。自社の業務フロー分析を行い、パッケージの仕様に業務を合わせることができるのであれば合わせてみる、または運用で合わせることができるのであれば合わせてみることも必要です。業務フローを分析する上では、現状の問題点の抽出も必要です。
これらの問題対策をパッケージ機能で対応する、内容に応じてカスタマイズで対応することも必要です。パッケージ機能として持たないユーザー固有の表示させたい内容や発行帳票についてもカスタマイズによる対応が必要となります。しかし、こういったカスタマイズは意外と費用もかかりますので、やりすぎは禁物ですので、選択が必要です。
このようにカスタマイズを最小限にすることによって、パッケージに対するコストアップと開発スケジュールの追加を抑え、早い段階で完成度の高いシステムを作ることが重要だと私は考えます。
一設計者であった私が、3D CADシステムからPDMシステムへ、また生産管理システムの立ち上げを行っています。もちろん生産管理システムとなると、全社活動になり全社の協力が必要になります。
専任の情報システム部門を持てない中小企業にとって、私どものように機械設計者が推進活動を行うことはめずらしいことではないと思います。今回お話したことが、同様な境遇の方の問題解決に少しでも役に立てばうれしいです。
次回は、「第2次PDM導入」についてお話しする予定です。
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