設計者によるPDM導入と生産管理システムの再構築:3D設計推進者の眼(8)(2/3 ページ)
機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回はPDMと生産管理システムの関係やその問題について語る。
第1次PDM導入の際の問題
前述の内容を「第1次PDM導入」とするのであれば、この時の問題を整理すると次のようになります。
- データベースMicrosoft SQL Serverを用いたシステムだったが社内にデータベースの知識がある人がいなかった
- 3D CAD運用から年月が経過していたため、膨大な量の3D CADデータ資産をファイルサーバに保有していた
- 流用設計された装置が、流用元の複製としてフォルダ化されていたため、ファイルサーバ内のフォルダ間には同一名のファイルが存在していた。
- ファイルサーバに保存されているものと同一名の3D CADデータがローカルに存在していることもあり、どちらが正しいデータなのか分からないものもあった。
- 3D CADのバージョンアップの必要性とこれに合わせたPDMのバージョンアップが重なった。
これまで理想的にできていなかった版管理を、このような状況で行おうとするわけなので、当然のことながらチェックインの状態からエラーが発生することになり、移行作業は厳しいものとなりますが、PDMシステムを立ち上げることができました。
ただ、PDMを用いて、標準的な部品のライブラリ化や、標準化、今で言うモジュール的なアセンブリ(サブアセンブリ)管理を行うにはまだまだ課題が多いですね。
「生産管理システム」とは
PDMと関連して、設計者としての私が考える生産管理システムについてお話します。
私が身を置く装置産業においては、設計によって作成された製品の最小単位は部品となります。その部品を記すためにも、装置の構成が表される必要があります。そしてその部品構成情報を示したものが「E-BOM(部品表)」です。ある製品を製作するためには、設計は資材購買部門にE-BOMを渡します。
資材購買部門はE-BOMの1つ1つの部品に対して、予算と納期、発注先を設定します。部品によっては工程を加える必要もあるでしょう。この時点でE-BOMは変化します。その後、これら部品は発注され、その情報も記されます。
後に納品される部品は予算ではなく、実績原価を持つので、この状態のBOMには実質原価が納品の都度記されていきます。資材購買によって情報が記されたBOMは「P-BOMP(Purchasing BOM)」ともいえそうです。
BOMは装置のユニット単位で作られているので、原価情報が記されたBOMによってユニットごとの原価が分かるようになり、更に装置を構成するBOM全てによって、装置原価も分かるようになります。
副資材もそこに反映できれば更に実質原価算出の精度も上がり、副資材の在庫情報まで管理できる可能性があります。また、装置を組み立てる上での工数も原価の構成の1つなので、この工数入力を行えば、更に実質原価計算の精度は高まります。
構想時に装置の価格を決める見積もり計算書の金額が、この生産管理システムの中で管理できるようになれば、見積もり原価、実質原価、営業利益を含む販売価格との対比が可能になります。
このように設計工程以降のあらゆる情報が記されたBOMベースのシステムが「生産管理システム」であると私は考えています。
ここで書いた、「あれがしたい、これがしたい」というものが、ユーザーが求める要求仕様ということになります。新たにシステムを構築しようとしても、既存のシステムがある場合、「あれこれが良くない、こう変更したい」ということも加わります。
更には、ハードウェアの構成や、導入スケジュールはどうするのか、システム導入の窓口は、ユーザー側、ベンダー・メーカー側ではどのような体制を取るのかなどを決めていく必要があります。
これらを決めながらプロジェクトを推進していくことが、まさにプロジェクトマネジメントです。PDM立ち上げのために勉強したプロジェクトマネジメントでしたが、生産管理システムを考える際にも役立ちました。
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