運転支援システムの有用性が自動運転の受け入れイメージを作り出す:自動運転技術 ホンダ上席研究員 横山利夫氏 講演レポート(2/3 ページ)
「オートモーティブ・ソフトウェア・フロンティア2016」の基調講演に本田技術研究所 四輪R&Dセンター 上席研究員の横山利夫氏が登壇した。ホンダの自動運転の取り組みを紹介。また、2016年は「Honda SENSING(ホンダ センシング)」に新たな機能を加え、運転に伴う負担をさらに軽減していく。
ホンダが考える自動運転とホンダ センシング
ホンダが考える自動運転は場所によって分けられる。例えば、都市内の過密した環境や渋滞の中では移動を快適にし、都市間の移動では運転の負荷を軽減しながら交通流の改善や効率化を図りたい。また、人口減少や高齢化が進む地方では、移動が困難になる人々を支援していきたい。安全/快適/自由な移動手段を、他の交通機関よりも優れた技術で実現していく。いつでも、どこでも、誰でも、家から目的地まで移動できるようにする。また、自動運転ではパーソナルな時間と空間に新たな価値を持たせていく。事故ゼロと移動の喜びを届けていきたい。
ホンダの安全技術を振り返ると、まずはパッシブセーフティからスタートして被害軽減技術の実用化を図ってきた。その後、予防安全技術として、認知支援、事故回避機能の実用化を進めている。2015年には、ホンダの予防安全技術をパッケージにした「ホンダ センシング」「アキュラウォッチ」を製品化した。将来の自動運転にむけては、運転支援技術と事故回避技術を極限まで完成度を高めることで実現していく。
ホンダ センシングは、前方、側方、後方のクルマの周囲360度を検知して運転支援や事故回避を行う。前方安全は衝突被害軽減ブレーキや歩行者事故軽減ステアリング、渋滞追従機能付きのACC、標識認識機能も搭載している。センサーは、物体の形や大きさを見るためのカメラと、物体の位置や速度を測るためのミリ波レーダーを組み合わせたシステムだ。自動ブレーキは車両だけでなく歩行者も対象としている。歩道の歩行者を巻き込む事故を防ぐ歩行者事故低減ステアリングもパッケージに含まれている。
今後、新たな運転支援機能を2つ採用する計画だ。
1つ目は交通渋滞時の運転支援機能である「トラフィックジャムアシスト」だ。トラフィックジャムアシストは、カメラとミリ波レーダーで前方車両を検知し、白線はカメラでセンシングする。既に実用化されている高速域のレーンキープアシストとアダプティブクルーズコントロールに、低速域のレーンキープアシストと低速追従機能(LSF:Low Speed Following)を組み合わせることで実現できる。
2つ目は、路側インフラと連携して信号情報を活用する信号情報活用運転支援システム(Traffic Signal Prediction System)だ。信号が切り替わるタイミングに合わせて、発進遅れ警告や、加減速を支援しスムーズに走行できるようにする機能だ。栃木県宇都宮市で実施した実証実験の結果を基にしている。
この機能は、信号に設置した路側インフラからの情報を利用し、ドライバーが信号の色に合わせて最適な走行ができるように表示で支援する。例えば、ドライバーは青信号で通過できそうなら速度を維持し、赤信号になる場合は早目に減速する。信号の待ち時間の残り秒数も表示し、ドライバーが青信号で速やかに発進できるように支援していく。
運転支援の先へ
ホンダは、運転支援システムだけでなく、運転の自動化レベルを引き上げる開発を進めてきた。2013年には協調型自動運転と自動バレーパーキングを発表。国会議事堂前の公道における自動運転車の走行もトヨタ自動車や日産自動車と共に実施した。2014年は、米デトロイトの高速道路で、2015年は首都高速道路で自動運転のデモンストレーションを行った。
首都高速道路を自動運転した車両には、白線や路肩、物体との距離を測るステレオカメラ、中長距離の障害物との距離や相対速度を検出するミリ波レーダー、レーザーレンジファインダーを搭載した。GNSSと高精度ジャイロセンサーを使用し、自車位置の同定を高精度地図とのマッチングで実現した。
首都高速道路で用いた自動運転車の制御システムは、GNSSによる衛星測位と高精度地図で現在位置を割り出し、センサーで検出した車線や周囲の障害物の情報を基にしてクルマの行動計画を立てる。
行動計画では、滑らかな経路からトラブル回避の緊急の車線変更など複数算出している。これらの行動計画算出結果に基づき、経路の安全性や快適性、非常時は衝突回避性などを踏まえた車両の最適な制御を行う。
首都高速道路では、高速道路の合流部分から出口までドライバーがステアリングから手を離した状態で自動運転できることを実証した。
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