運転支援システムの有用性が自動運転の受け入れイメージを作り出す:自動運転技術 ホンダ上席研究員 横山利夫氏 講演レポート(1/3 ページ)
「オートモーティブ・ソフトウェア・フロンティア2016」の基調講演に本田技術研究所 四輪R&Dセンター 上席研究員の横山利夫氏が登壇した。ホンダの自動運転の取り組みを紹介。また、2016年は「Honda SENSING(ホンダ センシング)」に新たな機能を加え、運転に伴う負担をさらに軽減していく。
2016年3月10〜11日に東京都内で開催された「オートモーティブ・ソフトウェア・フロンティア2016」の2日目の基調講演に本田技術研究所 四輪R&Dセンター 第12技術開発室 上席研究員の横山利夫氏が登壇。ホンダの自動運転の取り組みを紹介した。ホンダは自動運転で日々の移動を快適にすることを目指すだけでなく、運転する楽しさの進化にもこだわる。また、今後も運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」に新たな機能を加え、運転に伴う負担をさらに軽減していく。自動車業界の連携や、社会受容性、法規制といった自動運転の実用化で避けられない課題にも触れた。本稿では、横山氏が講演で語った内容をレポート形式で紹介する。
自動運転に肯定的な人、否定的な人の特徴とは
自動運転は、交通事故や渋滞による損失をなくしていくためにある。国内で年間に発生している交通事故は57万件、交通事故死者数は4117人に上り、事故ゼロには程遠い。また、交通渋滞によって年間6兆3000億円もの損失が国内で発生している。
渋滞が環境に与える影響も大きい。移動時の速度が時速30kmから時速15kmに低下するとCO2の排出量が30%増加するという試算もある。経済損失にして10兆円近くなるといわれている。
高齢化に対応する施策の一環としても、自動運転の位置付けは重要だ。2012年時点で、国内人口における65歳以上が占める割合は25%を超えている。さらに、2050年には高齢者の比率は全国平均で37%、地方では45%まで上昇する。高齢化は物流事業者への影響も大きい。小口かつ多頻度の配送が増加している一方で、物流業務の従事者の高齢化や若手社員の減少が進んでいるからだ。
2014年に日米欧で行った自動運転に対するイメージを尋ねるアンケート調査では、好意的に捉える回答が47%、どちらでもないという答えが35%、ネガティブな回答が19%を占めた。北米、日本、欧州のいずれでも同じ傾向だった。
この調査では他の細かな回答から、自動運転を肯定的に捉える人、否定的な人、どちらにも属さない人の人物像を推定している。
自動運転を好意的に評価しているのは、ほぼ毎日など運転頻度の高い人で、自動ブレーキや自動追従など装備が充実したモデルに乗っている。あまり運転しない人でも、自動ブレーキ搭載車に乗ったことがある人は自動運転を肯定的に評価しているという結果になった。
反対に、自動運転にネガティブなイメージを持つと回答した人は、あまり運転せず、自分が運転するクルマの価格も知らないという女性が多かった。また、どちらでもないという回答をするのは、先進運転支援システムを搭載したクルマを運転したことがほとんどない人だった。
自動運転を実用化する上では、いきなり自動運転車に乗ってもらうのではなく、まずはさまざまな運転支援システムの有用性を感じてもらい、自動運転のイメージをつくっていく必要がある。
自動運転技術開発の歴史
運転支援の先駆けとして、ホンダは2002年、「アコード」に車線維持支援機能を搭載した。単眼カメラで白線を見ながら車線に沿うように操舵を支援する。運転負荷の軽減に効果があったという結果も得られた。また、ホンダは2003年に衝突被害軽減ブレーキを製品化した。ミリ波レーダーで先行車両を検知して衝突を予測し、3段階でアシストする機能だ。1次警報はシートベルトを引き込んでドライバーに注意を促す。2次警報では弱いブレーキを作動させ、最終的にはブレーキをより強くかけて被害を軽減する。
ホンダの例から離れ、2004年にスタートしたDARPAチャレンジを紹介しよう。DARPAは北米の国防省の研究機関で、懸賞金イベントを通じて知能化や自動化の研究を支援してきた。懸賞金イベントには「グランドチャレンジ」と「アーバンチャレンジ」の2つがあった。
グランドチャレンジは240kmの砂漠のコースを無人運転で走破するというもの。2004年は完走車ゼロだったが、その後1年間で技術開発が進展し、2005年には5チームが完走した。2007年のアーバンチャレンジでは、空軍の模擬市街地をコースとし、100kmの道のりを交通ルールを守りながら自動運転技術を競った。アーバンチャレンジでは、自動運転車だけでなく、人間のプロレーサーも混ざって走行した。
これらのイベントは、Google(グーグル)が開発中の無人自動運転車のルーツでもある。数多くの北米のロボティクスの研究者がこのDARPAチャレンジに挑み、自動化/知能化技術を自動車に応用しようと取り組んだ。この自動運転に有効な技術を持った技術者がグーグルに移り、同社の無人自動運転車の開発を進めている。
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