困ったら読みたいマブチモーター制御のTips:Arduinoで学ぶ基礎からのモーター制御(4)(3/4 ページ)
この連載ではここ数回、「マブチモーター」に代表される直流ブラシ付きモーターをマイコンから制御する話をしていますが、今回は困ったときに読みたい、知っておくと便利なTipsを幾つか紹介したいと思います。
PNP型トランジスターとコンプリメンタリー
この連載でArduinoからモーターを制御するために使っているトランジスタ「2SC2120-Y」は「NPN型」と呼ばれる形式です。このN型やP型という言葉は半導体の特性を表しており、N型は電子の多い半導体、P型はこの逆に電子が少ない(あるいは正孔が多い)半導体です。これらの性質の異なる半導体を重ね合わせることにより、トランジスタやダイオードは製造されます。
NPN型トランジスタはN型の半導体でP型の半導体を挟んだような構造をしており、PNP型トランジスタはその逆で、P型の半導体でN型の半導体を挟んだような構造をしています。半導体メーカーはこのNPN型トランジスタとPNP型トランジスタをペアで製造しています。このペアの関係をコンプリメンタリーと呼びます。
このコンプリメンタリーのトランジスタ同士は電流が流れる方向こそ真逆ですが、それ以外の性質は全く同じです。このコンプリメンタリーのトランジスタを組み合わせるといろいろと有用な回路を構成できます。後ほど紹介する直流ブラシ付きモーターの正転・逆転回路やオーディオの最終増幅段に用いられたりします。
「2SC2120-Y」とコンプリメンタリーの関係にあるトランジスタが「2SA950-Y」です。それでは2SA950-Yを用いた直流ブラシ付きモーターの駆動回路を紹介します(図5)。
PNP型トランジスタの場合はエミッターがプラス電源つながります。PNP型のトランジスタは電気記号のエミッターの矢印が内向きになっています。NPN型とは矢印の向きが逆ですね。そしてコレクター側がモーターを介してGNDにつながります。NPN型の回路と比較して電源の極性をそのまま逆にした形になります。それ以外のベースにつながった抵抗の値には変更はありません。
NPN型のトランジスタの場合はベースにつながったGPIOの出力が1になった時にモーターが回転しますが、PNP型の場合はこの逆でGPIOの出力が0の場合にモーターが回転します。この点には注意が必要です。
なお、NPN型とPNP型では電流の流れる方向以外は同じ性質を持ちますので、どちらを選ぶかは電流の流れる向きで決めることになります。負荷(この場合はモーター)を電源側で制御したいケースではNPN型、グランド側で制御する場合はPNPを選択することになります。ただ、回路設計をする際、普及が早かったNPN型を用いることが一般的となっています。
Hブリッジでモーターの回転方向を制御する
直流ブラシ付きモーターから出ている2本のリード線に電池をつなぐだけでモーターは回転しますし、電池の極性を逆にすればモーターは逆回転します。
このような電池の極性を切り替える回路を、トランジスタの組み合わせで考えてみましょう。図6がその回路図です。このようにNPN型のトランジスタとPNP型のトランジスタを組み合わせてモーターに与える電源の極性を反転させる回路をHブリッジといいます。
Q1とQ3がPNP型トランジスタ、Q2とQ4がNPN型トランジスタです。そしてQ1とQ2のトランジスタは互いにコンプリメンタリーの形になります。この様にPNP型とNPN型で構成される回路をコンプリメンタリー回路と云います。このコンプリメンタリー回路を2つ組み合わせることでHブリッジ回路が構成されます。
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