倒産寸前の大ピンチからV字回復、ICT活用で復活した紳士服メーカーの戦略:イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(6)(3/6 ページ)
自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。第6回となる今回は大阪市谷町にある紳士服メーカーのNFLを紹介する。
ネット通販で起死回生を図る
前職でWebサイト製作の経験があった川辺社長は、在庫品をさばくため1999年に楽天に出店した。楽天が開催した出店セミナーに参加した際に聞いた「売れます!」という言葉を信じたからだ。
しかし、2年間は売れなかったそうだ。
2001年くらいになって、ようやくネクタイやシャツ、カフスボタンなどの小物が売れ始めたという。品ぞろえを300点、500点、1000点と増やしていくと、売り上げもそれに比例して100万円、300万円、500万円と増えていった。
以来、毎年150%アップで売り上げを伸ばしてきた。そして2004年に川辺さんは独立し、フォーマルウェアに特化したNFLを立ち上げる。製造卸から製造小売に 業態の転換をはかったのだ。2006年には、谷町にリアル店舗もオープンした。ところがネットショップは好調なのに、リアル店舗は苦戦した。そして2007年になると、ネット店舗の売り上げも伸び悩んだ。大手服チェーンがネット通販を始めたのだ。思い切って1000万円の広告費を費やしても、効果がなかった。
そんな頃にランチェスター経営※の手法を学び、リピーター獲得の大切さと、ブログを活用した情報発信でネット集客をする重要性を知ったという。それまでは、タキシード購入者がリピーターになるという発想がなかった。けれど、視点を変えた。タキシードを購入したお客さんにニュースレターを書き、スーツや小物を勧めたのだ。
※ビジネス戦略理論の1つ。市場におけるその企業の立ち位置を「強者」と「弱者」に分け、それぞれがどのような販売戦略をとるべきかを理論化したもの
当初は「ブログ? 日記みたいなものを書いて、本当に売り上げがあがるのか?」と半信半疑であったが、ブログも始めた。
NFLの主力製品はタキシードだ。「タキシードは、ネットで検索されることが多い商品だったのが幸いしました」と川辺社長は振り返る。タキシードや燕尾(えんび)服、モーニングはいざ必要になったときに「どこで買ったらいいか分からない」と検索されることの多い商品だからだ。
日常で着る機会がないから、ユーザーはフォーマルウェアを着こなすルールやコーディネートが分からずに不安を持っている。情報を収集するために検索して、同社のサイトにたどり着き、安心したら購入する。
お客さんは、タキシードやスーツを購入するために同社のサイトへアクセスするわけではない。商品を買いに来ているのではなく、教わりにきている。それに気付いてからサイト運営の視点が変わったそうだ。
ブログ集客は成功し、売り上げはたちまち3倍になったという。大阪府内だけではなく、香川県や徳島県など遠方からも車で来店する顧客が増えた。
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