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倒産寸前の大ピンチからV字回復、ICT活用で復活した紳士服メーカーの戦略イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(6)(4/6 ページ)

自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。第6回となる今回は大阪市谷町にある紳士服メーカーのNFLを紹介する。

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若手の縫製職人を育成し、世界一の紳士服縫製技術を伝承

 かつて、谷町には40軒ほどの縫製工場があったが、今ではNFL1軒だけになった。川辺社長の願いは、谷町で培われた世界一の紳士服縫製技術を伝承することだ。そのために、自社の工房で若い縫製職人を育てることに力を注いできた。縫製職人の高齢化が進み、将来、人材不足になるのが目に見えていたからだ。


自社の工房で、世界一の紳士服縫製技術を伝承していく

 しかし、縫製で募集をしてもなかなか人材が集まらなかった。

 そこで、洋服の修繕を行う専門店を開き、そこに若い社員を集めた。梅田のすぐ隣にある中崎町は、雑貨屋さんや古着屋さんがありちょっとレトロな風情だ。なのに、空を見上げると梅田の高層ビルが目に入る。不思議な雰囲気の町だ。川辺社長は、「ここに服のお直し専門店を出したらいいな」と考えたそうだ。店舗でまず洋服の修繕を学び、次に工業用ミシンになれてもらう。そして服の縫製へと徐々にレベルアップさせていく戦略だ。

 若い社員が入るようになると、服飾専門学校からのインターンシップも受け入れられるようになった。今では毎年1人ずつ新卒を採用している。社員構成も20代が8人、65歳以上が4人と若返った。

 「若い職人の定着率はいいですよ」と川辺社長は、自社の職人育成のシステムに自信を見せる。インターンシップのときには、仕事の速さ、丁寧さ、コミュニケーション能力を見る。1着のスーツをチームで作り上げるから、協調性は大事だ。

 大きな工場ではないから、全ての工程が見通せる。自分がここでどんな技術を身につけられるのか、将来の予測が立つのだ。スキルを積めば、任せてもらえる仕事の幅が広がる。ベテランの職人は、自分の技術を残したいという思いがあるから、熱心に教える。若者は技術を吸収し、いつかは自分もスーツを1着縫えるようになると夢をみることができる職場なのだ。

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