APICSを活用する――世界有数の企業も認める“洋魂和才”のSCM基盤:生産管理の世界共通言語「APICS」とは(5)(5/6 ページ)
サプライチェーンマネジメント(以下SCM)の体系的な知識を提供するAPICSを専門家が解説していく本連載。5回目は「APICSを活用する」価値と効果について解説する。
企業のAPICS資格・教育の活用事例
企業内における活用を通じた効果、収益の観点でのAPICSの有効性についてはどうだろうか。まず、公表されている主要企業のAPICS活用事例を表5にまとめた。
※)Gartner社が、主要企業の業績・SCM水準を反映した財務指標、投票を通じ、年次で報告している格付レポート。日本企業ではトヨタが2015年に24位にランクインしている
このように、世界有数の企業が、数百人規模でAPICS有資格者を育成し、社内でノウハウの普及を進め、大きな成果をあげていることが分かる。APICS資格活用の例は表5で紹介した企業にとどまらない。Gartner社が毎年公表するTop 25サプライチェーン格付の内15社がCSCPの教育を支援しているという(出典:APICS公式サイト)。
APICS資格取得の効果は、中小企業でも実証されている。例えば、中小規模の企業で、調達、生産管理、製造の各部門のリーダー3人がCPIMを取得したことで、同企業の在庫を数十パーセント削減できた、といったケースも聞く。
さて、日本における活用事例に目を向けてみよう。日本におけるAPICS活用は、表5に列記されたような外資系企業の日本法人では積極的に進められている。しかし、残念ながら日系企業においては、顕著な取り組みは報告されていないのが実情である。意欲のある部門長や個人が、チームメンバーや個人の自己啓発を目的として取り組んでいる、という規模にとどまっているのが実体だろう。
しかし、限られた事例ながら、日本生産性本部(以下JPC)が主宰するAPICSコミュニティーでは、次のような事例も報告されている。
- 某大手電機メーカーの例:米国製造拠点駐在時に、現地要員がAPICS知識体系・用語を活用し、円滑なコミュニケーションに役立てている状況を理解。自らもCPIMを取得し、コミュニケーションの円滑化に取り組んだ
- 某ITベンダーの例:香港における英語のプレゼンテーションで、正しく相手に意図を伝えるために不必要に多くの時間を要したことをきっかけにAPICSの知識体系・用語活用に着手。組織的に資格習得に取り組んでいる
筆者の在籍企業でも、SCOR活用業務改善プロジェクト、APICS用語の一部資料・製品反映などの経験を積み上げてきている。JPCによるAPICS JAPANがスタートしたのは2011年である。筆者がCPIMを取得した2003年には日本では受験すらできなかったが、今では日本での受験だけではなく、日本語での教育受講も可能になっている。グローバル化の進展に伴い、日本における活用事例も着実に増えていくことになるだろう。
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