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「コグニティブ」で国内が産学連携、「2019年度までに何らかの成果」製造ITニュース

情報・システム研究機構 国立情報学研究所は、新たな研究部門「コグニティブ・イノベーションセンター」を設立した。人工知能にとどまらない幅広い要素技術を融合した知的情報処理によって技術革新を起こすことを目指す。日本IBMが研究を支援する他、一般企業も参画して2019年度までに何らかの成果を上げる。

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 情報・システム研究機構 国立情報学研究所は2016年2月15日、東京都内で会見を開き、新たな研究部門「コグニティブ・イノベーションセンター」を設立したと発表した。人工知能にとどまらない幅広い要素技術を融合した知的情報処理によって技術革新を起こすことを目指す。日本IBMが同センターと研究契約を結んだ他、金融や製造業、食品など一般企業も参画し、研究開発に取り組む。3年後の2019年度までに何らかの成果を上げる。

左から日本IBMのキャメロン・アート氏、国立情報学研究所の喜連川優氏、同研究所の石塚満氏
左から日本IBMのキャメロン・アート氏、国立情報学研究所の喜連川優氏、同研究所の石塚満氏

 コグニティブ・イノベーションセンターのテーマである「コグニティブ・テクノロジー」は、機械学習や自然言語の処理、ビッグデータの利活用、人工知能など広範囲の知的情報処理技術を指す。2019年度までにコグニティブ・テクノロジーによって社会に貢献するイノベーションを創出することを目標とする。

 現時点では研究プロジェクトの進め方は決まっておらず、2016年6月ごろに今後研究する対象を議論し、実用性を評価するためのデモシステムの開発に着手する。「(何も決まっていないのは)逃げているように見えるかもしれないが、変化の激しいIT分野の研究開発に取り組む上で最適なフレームワークだと考えている。事前に計画を全て決めてしまう従来の研究プロジェクトではやりにくい部分が多いので、センターを運営する中で柔軟に進めていく」(国立情報学研究所 所長の喜連川優氏)。

 同センターでは、一般企業も参加する研究会を定期的に開催し、コグニティブ・テクノロジーの効果的な活用を促進する。参画企業の役員クラスを招き、コグニティブ・テクノロジーの研究成果やビジネスでの応用例などに関する情報を提供していく。

 2016年2月15日時点で参画を表明している企業は以下の21社。アルパイン/イオンフィナンシャルサービス/オリンパス/エイチ・アイ・エス/小松製作所/みずほフィナンシャルグループ/三井住友銀行/三越伊勢丹ホールディングス/三菱東京UFJ銀行/キッコーマン食品/キリンビール/第一生命保険/帝人/DIC/東京海上日動火災保険/日揮/日産自動車/日本航空/パナソニック/三菱自動車/明治安田生命保険。

 また、即座に具体的な研究開発に着手するのではなく、まずは「参画企業にコグニティブ・テクノロジーの現状と可能性を理解してもらう段階にある。人工知能はブームになっているものの、研究も利活用も層が浅いのが日本の状態だ」(コグニティブ・イノベーションセンター センター長の石塚満氏)という。「海外ではIT企業が人工知能に関してカネもヒトも投じているが、FacebookやGoogleは自社のサービスを強化することに主眼を置いている。一方、IBMは他の企業を積極的にサポートしようとしている頼りになる存在なので、われわれのセンターでも支援を受けることにした」(同氏)。

 日本IBMは同センターと研究契約を結び、同センターに対して人工知能の「Watson」やクラウド基盤「Bluemix」を提供する。また、研究者やコンサルタントによる研究支援も行う。日本IBMが同センターに提供した研究費用の金額は非公表としている。

 同センターとの連携に関して日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業本部長のキャメロン・アート氏は「センターへの参画企業にIBMの製品を採用してもらうことを見込んだ取り組みではなく、業績やビジネスに直結させることは考えていない。参画企業のリーダー達との協業の中で、人工知能を有効活用する道を切り開いていきたい」と述べた。

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