車載スイッチやセンサーをレーザー溶着で高品質に封止、パナソニックが新材料:車載電子部品
パナソニックは、車載用スイッチやセンサーなどの長期信頼性と設計自由度の向上に貢献する「レーザー溶着用PBT樹脂成形材料」を製品化した。2016年3月から本格量産を開始する。
パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は2016年2月12日、車載用スイッチやセンサーなどの長期信頼性と設計自由度の向上に貢献する「レーザー溶着用PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂成形材料」を製品化したと発表した。同年3月から本格量産を開始する。
この材料は、車載用スイッチやセンサーなど気密部品を内部に封止する際に用いる。レーザー光透過材とレーザー光吸収材をレーザー光を照射することで溶着接合する「レーザー溶着加工」に用いられる。レーザー溶着加工は、パッキンやボルトを使用した封止加工や、接着剤を使用した接着、超音波溶着などと比べて、溶着強度が高く、接合時間も短縮できることから注目されている。しかし、従来のレーザー溶着加工に対応するPBT樹脂成形材料は、レーザー光透過材の透過率が低く、溶着強度や防水性に課題があった。
パナソニックの新材料は、レーザー光透過材の透過率を同社従来品の52%から72%まで高めることで高強度の溶着が可能になった。具体的には、ポリマーアロイ技術によって、レーザー光を高効率で透過/吸収して瞬時に溶融し、溶着部におけるレーザー光透過材とレーザー光吸収材の分散状態がより均一になるようにした。
また、ガラス繊維をランダム配向させて反りを抑制する材料改質技術により、成形品の反り量を同社従来品の2.3mmから0.5mm以下まで低減。安定した品質性能の確保と設計自由度の向上も実現している。加工形状については、円形や四角形といった対称的なパターンだけでなく、他の加工法では難しい非対称的な形状や凸凹などの三次元的に複雑な加工にも対応できるという。
さらに、耐水性の指標となる耐加水分解性についても、加水分解反応を防止できる樹脂改質技術を開発することで車載用途で求められる性能を満たした。高温高湿試験後の引張強度保持率は、同社従来品は50%に過ぎなかったが、新材料では94%まで向上している。これにより、7mmサイズの小型スイッチから100mmサイズの大型部品まで対応可能になり、エンジンルーム内でも使用できるようになった。
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