米国で進む医療機器とビッグデータ連携のためのルール整備:海外医療技術トレンド(9)(2/3 ページ)
デバイスとしての医療機器は、モノのインターネット(IoT)を介してビッグデータと連携する。米国では、データ利活用に向けた標準化への取り組みも急ピッチで進んでいる。
「データプロバイダー」と「データコンシューマー」に関わる医療機器
以下では、各構成要素の概要と役割を担うプレイヤーおよび活動内容例を紹介する。
「システムオーケストレーター」は、システムが充足すべき要求事項の橋渡し役となり、データシステムの要件、設計、モニタリング機能を提供する。その役割を担うプレイヤーと具体的な活動内容を示すと、以下のようになる。
| システムオーケストレーターのアクター/ロール(例) | 活動内容(例) | 
|---|---|
| ・ビジネスリーダー ・コンサルタント ・データサイエンティスト ・情報アーキテクト ・ソフトウェアアーキテクト ・セキュリティアーキテクト ・プライバシーアーキテクト ・ネットワークアーキテクト  | 
・ビジネスオーナーシップの要求事項とモニタリング ・ガバナンスの要求事項とモニタリング ・データサイエンスの要求事項とモニタリング ・システムアーキテクチャの要求事項とモニタリング  | 
「データプロバイダー」は、さまざまなソースから抽象データ型を生成し、異なる機能インタフェースで利用できるような形で提供する。
| データプロバイダーのアクター/ロール(例) | 活動内容(例) | 
|---|---|
| ・企業 ・公的機関 ・研究者/科学者 ・検索エンジン ・Web、FTPおよびその他のアプリケーション ・ネットワーク運用者 ・エンドユーザー  | 
・ソースからのデータ収集 ・データの持続性 ・データのスクラブ ・データの注釈付与/メタデータ生成 ・アクセス権限管理 ・アクセスポリシー契約 ・データ配信API ・機能(例:クエリ)のホスティング  | 
「ビッグデータアプリケーションプロバイダー」は、システム・オーケストレーターが設定した要求事項を充足するために、データライフサイクルの操作を実行する。
| ビッグデータアプリケーションプロバイダーのアクター/ロール(例) | 活動内容(例) | 
|---|---|
| ・アプリケーションスペシャリスト ・プラットフォームスペシャリスト ・コンサルタント  | 
・収集 ・準備 ・分析 ・可視化 ・アクセス  | 
「ビッグデータフレームワークプロバイダー」は、特定のアプリケーションを開発するビッグデータアプリケーションプロバイダーに、インフラストラクチャフレームワーク、データプラットフォーム、処理フレームワークを提供する。
| ビッグデータフレームワークプロバイダーのアクター/ロール(例) | 活動内容(例) | 
|---|---|
| ・内部のクラスタ ・データセンター ・クラウドプロバイダー  | 
・インフラストラクチャフレークワーク ・データプラットフォームフレームワーク ・処理フレームワーク  | 
「データコンシューマー」は、ビッグデータの出力値を受け取る。一般的には、データプロバイダーがビッグデータアプリケーションプロバイダーに提供する機能と同じものを受け取ることが多い。
| データコンシューマーのアクター/ロール(例) | 活動内容(例) | 
|---|---|
| ・エンドユーザー ・研究者 ・アプリケーション ・システム  | 
・検索/取得 ・ダウンロード ・ローカルでの分析 ・レポーティング・可視化  | 
「マネジメントファブリック」は、ビッグデータ環境に関連するシステムおよびビッグデータのライフサイクルを管理する。
| マネジメントファブリックのアクター/ロール(例) | 活動内容(例) | 
|---|---|
| ・内部スタッフ ・データセンター管理 ・クラウドプロバイダー  | 
・プロビジョニング ・構成管理 ・パッケージ管理 ・ソフトウェア管理 ・バックアップ管理 ・キャパシティー管理 ・リソース管理 ・データ管理 ・パフォーマンス管理  | 
「セキュリティ/プライバシーファブリック」は、ポリシー、要求事項、監査でシステムオーケストレーターと連携し、開発、導入、運用でビッグデータアプリケーションプロバイダーおよびビッグデータフレームワークプロバイダーと相互連携する。
| セキュリティ/プライバシー・ファブリックのアクター/ロール(例) | 活動内容(例) | 
|---|---|
| ・コーポレートセキュリティオフィサー ・セキュリティスペシャリスト  | 
・セキュリティ/プライバシーポリシーの要求事項 ・セキュリティ/プライバシーモニタリング  | 
ウェアラブルセンサー/M2Mネットワークに代表されるIoTが発達した医療機器は、データソースの入口となる「データプロバイダー」とビッグデータ解析の結果を返す「データコンシューマー」の両方の役割を担うことになり、ビッグデータシステムとの連携がリアルタイム、シームレスなものになる。
このように医療機器を起点とするIoTが、ビッグデータと密に連携することによって、新たなバリューチェーンが構築されると、ユーザーである医療機関にとっては、相互運用性とセキュリティ/プライバシーを担保しながら、パフォーマンスの全体最適化を図ることが、IT戦略上の重要課題となっていく。
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