ヘッドランプ進化の歴史、シールド式からハロゲン、HID、LED、そしてレーザーへ:いまさら聞けない 電装部品入門(23)(2/5 ページ)
自動車が夜間走行する際に前方を照らすとともに、その存在を他の車両や歩行者に知らせる役割も果たすヘッドランプ。かつて北米で義務付けられていたシールドビーム式から、ボディ内部に格納できるリトラクタブル式、ハロゲン、ディスチャージ、近年採用が拡大しているLED、そして次世代技術のレーザーまでを総ざらえする。
シールド式のデザイン制約を打破したリトラクタブル式ヘッドランプ
このデザインが制約されてしまう状況を打破した1つの手法が、今でもファンが多いリトラクタブル式ヘッドランプです。
ヘッドランプをボディ内部に格納し、点灯時のみ出現するという構造ですね。
一時期のスポーツカーなどでよく見られた構造ですが、原油高騰によって根付いた燃費への意識によって、空気抵抗を減らしたい設計路線に大きく逆行することから徐々に姿を消して行きます。
他にも、車両前方から歩行者と衝突する事故の際に、リトラクタブルヘッドランプが一種の突起物となって、必要以上に歩行者を傷付ける要因となってしまうことも、姿を消した要因の1つといえるでしょう。
結果的に、長年続いた北米での丸いヘッドランプ規制は1983年に撤廃されます。しかし、それを待たずして欧州などではボディに合わせてヘッドランプをデザインすることが当たり前になっていました。
1980年以降採用が広がったハロゲンランプ
同じく1980年以降、自動車用のヘッドランプにはハロゲンランプが多く採用されるようになりました。
ハロゲンランプは通常の白熱電球と同様に、タングステンで作られている「フィラメント」と呼ばれる糸状の金属に電流を流すことで、熱が発生する際に発せられる光を明かりとして利用します。
白熱電球との主な違いは、電球内部に封入されている不活性ガスにハロゲンガスが含まれていることです。
電気を流して超高温になると、フィラメントの素材であるタングステンは固体から一気に気体へと昇華します(発光時で約2500℃)。
しかし一度昇華したタングステンは元のフィラメントに戻ることはなく、黒い粉となって電球内に残ります。また一定以上昇華してしまうと、フィラメント自体が細くなりすぎて折損してしまいます。
白熱電球に定期的な交換が必要なのは、タングステンの昇華によるフィラメントの消耗が主な理由です。
そこでハロゲンランプでは、白熱電球内部にハロゲンガスを封入して、タングステンが昇華した後もフィラメントに戻る化学反応が生じるような仕組みになっています。これによって劇的に寿命が伸びるのはもちろん、従来以上に高温にして明るくしても寿命を確保できるようになりました。
ハロゲンランプと聞くと、ちょっとした暖房器具として用いられることもあるほど高熱を発することが知られています。これは、一度昇華したタングステンをあらためてフィラメントに戻す反応を促進させるため、電球内面を意図的に高温にしているからです。
ハロゲンランプは低コストかつ必要十分な光量を持ち併せているため、今でも純正ヘッドランプとして採用されています。
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