ジューコフスキー翼を作図してみる:無償ソフトで流体解析(4)(3/4 ページ)
無償で使える流体解析ソフト「Flowsquare」を使ってみよう! 今回はジューコフスキー翼の作図方法について説明する。
能書きはともかく……、「とにかく翼型を作図したい」という方には、以上の計算を行い、翼型を表示するExcelシート(joukowski.xls)を用意しましたので、このリンクからダウンロードして利用してください。
joukowski.xlsのシートのセルB1が迎角の入力欄で、セルB2がξ0、セルB3がη0の入力欄です。定数cは自動で計算されるため、セルB4への入力は不要です。セルB1、B2、B3を変更すると、対応して、翼型が変わります。迎角も考慮した翼型のX座標はF列に、Y座標はG列に表示されています。
ジューコフスキー翼は翼後縁が尖るという難点はありますが、比較的簡単に作図できますので、興味のある方は利用してみてください。
今回は、迎角5度、15度、30度でのジューコフスキー翼を作図し、Flowsquareで翼周りの流れを解析してみます。解析結果(zipファイル)は以下のリンクからダウンロードしてください。
以降の数値が迎角になります。ダウンロードしたzipファイルを「右クリック→全て展開」とすると、それぞれのフォルダにモデルデータが収納されたbkupフォルダ、計算結果が収納されたdumpフォルダ、画像データが収納されたfigsフォルダができあがります。円柱周りの流れを計算するには、bkupフォルダ内のbc.bmpとgrid.txtファイルで、flowsquare.exeの隣の同名のファイルを上書きして、Flowsquareを起動して、連載1回目で説明した方法に従ってシミュレーションを行ってください。
解析モードで計算結果だけを見る場合は、Flowsquareを起動して、プロジェクト名入力画面で、「joukowski_5 −a」と入力し、計算結果を読み取ります。前回の円柱周りの流れの解析と同様に、翼周りの流れの解析においても、正しい解析を行うには、十分に大きな解析空間を持たせる必要があります(翼前方には翼弦長の10倍以上、翼後方には翼弦長の20倍以上、主流と直角方向には翼弦長の10倍以上が目安となります)。ただし、これらの条件を満足するようにモデルを作成するとFlowsquareでは、膨大な計算時間が必要となるため、便宜上、翼付近の空間だけをモデルとしています。実務で用いるような解析を行う際は、十分な解析空間を設けるようにしてください。
図5に示したのが、迎角5度での翼周りの流速分布で、図6は同じく、静圧分布です。
図5で流速の大きさを示す赤色の度合いを見ると、翼背面側が翼腹面側よりも濃くなっていることが分かります。すなわち、翼背面側の流速は翼腹面側よりも大きくなっていることが分かります。その結果、連載2回目のベルヌイの定理から翼背面側では静圧が低下すると考えられます。
図6の静圧分布を見ると、翼背面側では静圧は小さくなっていることが分かります。また、腹面側の静圧が大きいことを示す赤い領域より背面側の静圧の小さい青い領域の方が後方にずれていることが分かります。つまり、静圧差により翼に働く力は、流れの方向に傾いていて、揚力を発生させる他、翼を主流方向に引きずる力すなわち、抗力も生み出します。このうちの主流と直交する成分(図6ではy軸方向)が揚力となり、主流と平行な成分が抗力となります。
図5で翼周囲の青い領域を見ると、翼背面側に比較的大きく広がり、翼形状を示す灰色の形状とは異なっていて、翼周囲の流れは、必ずしも翼の形状に沿っているわけではないことが分かります。つまり、翼型のデザインにおいては、翼表面の曲線が流れの曲線にそのままつながるわけではないということです。このため、翼型開発では風洞実験を必要としましたが、現在では流体シミュレーションも用いられています。
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