設計者に最適形状を提案する「Xdesign」がデザインにイノベーションを起こす!?:SOLIDWORKS World 2016(2/2 ページ)
米ソリッドワークスは、年次ユーザーイベント「SOLIDWORKS World 2016」を米国テキサス州ダラスで開催。最初の基調講演ではSOLIDWORKSブランドのCEOであるジャン・パオロ・バッシ氏が登壇し、ジェネレーティブデザインのアプローチを組み込んだWebブラウザベースの設計ツール「SOLIDWORKS Xdesign」の概要が発表された。
イノベーションプラットフォームの3つの展開
SOLIDWORKSをイノベーションプラットフォームとして展開していく上で、同社は「デスクトップ」「コネクテッド」「オンライン」の3つの戦略的な柱を掲げる。
1つ目の「デスクトップ」について、バッシ氏は「人々は何かをデザインしようと思った際、そのやり方は自由であるべきだと考える。そこで、オンライントライアルエディションの提供を拡大することにした」と説明。オンライントライアルエディションとは、アプリケーションをPCにインストールすることなく、WebブラウザがあればすぐにデスクトップのSOLIDWORKSと同じ機能が使用できるもの。これまで何千人もの先行ユーザーがトライアルに参加し、非常に好評なのだという。これを受け、今回14カ国語に対応させ、オンライントライアルの世界展開を計画しており、「将来的にはこれを製品化しようと考えている」とバッシ氏は語った。このオンライン版(フルクラウド版SOLIDWORKS)が加わることで、ユーザーはより柔軟にライセンスを選択できるようになるという。
次の「コネクテッド」については、ダッソー・システムズのコラボレーション開発基盤「3DEXPERIENCE platform」に対応したSOLIDWORKSブランドのツール「Conceptual Designer」を紹介。Conceptual Designerとは、製造プロセスの初期段階で行う概念設計に必要な各種機能を実現するもので、バッシ氏は「概念設計のプロセスは非常に可能性を秘めており、イノベーションを起こす要素が十分にあると判断し、Conceptual Designerというアプリケーションの柱を構築するに至った」と説明した。
そして、最後の柱「オンライン」についてだ。「この部分は非常に重要視している部分で、オンライン世代の新しいアプリケーションの投入を計画している」と明かした。それが次のパートで紹介する「Xシリーズ」だ。Xシリーズの一連のアプリケーションは全てWebブラウザベースのものであり、Webブラウザさえあればいつもでどこからでも設計が行えるようになるという。「われわれは、設計者の環境を全てデスクトップからWebブラウザへと移行させたいわけではない。そうではなく、ユーザーの選択肢の幅を広げ、イノベーションの門戸を開こうと考え、WebブラウザベースのXシリーズを展開することにした」とバッシ氏は述べる。
間もなく製品化? SOLIDWORKSブランドに「Xシリーズ」登場
近々製品化される可能性のあるテクノロジープレビューとして紹介されたXシリーズ。まず発表したのが「Xdrive」だ。ダッソー・システムズの3DEXPERIENCE platformに対応したアプリケーションで、SOLIDWORKS 2016のサブスクリプションユーザーであれば5Gバイトのセキュアなオンラインストレージ領域が付与され、SOLIDWORKSで設計したデータを保存するなど、自由に利用できる。Xdrive上では全てのデータがインデクシングされ、SOLIDWORKSで設計したデータはサムネイル表示される。Xdriveを活用することで、いつでもどこからでも誰とでもコラボレーションが行えるという。
「GoogleドライブやDropboxに近いイメージだ。一番の大きな違いはSOLIDWORKSの設計データを認識できること。サムネイル表示も行えるし、検索エンジン『EXALEAD』によりXdrive上の設計データの類似形状検索なども可能だ。また、データの分類や詳細な3Dプレビュー、アノテーションも直接行える」(バッシ氏)。
Webブラウザベースの設計ツール「Xdesign」
そしてもう1つ、Xシリーズの製品として紹介されたのがWebブラウザベースの設計ツール「Xdesign」だ。Webブラウザベースでインストール不要でありながら、基本的なCADとしての機能はSOLIDWORKSデスクトップ版と同等であるとし、「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2015」の際に、バッシ氏自ら実現を約束した「オプティマイゼーション(ジェネレーティブデザイン)」の要素が組み込まれているのが最大の特長だ(「イノベーションプラットフォームに育て上げる」、SOLIDWORKSの将来展望)。
「Xdesignはジェネレーティブデザインの中で、トポロジー最適化に基づいた設計支援が行える。長年、ジェネレーティブデザインに関する機能追加を望んでいたがようやく実現できた。これにより従来のデザインが大きく変わるだろう」(バッシ氏)。
また興味深いのがXdesignで設計したデータはファイル形式では保存されないのだという。バッシ氏の説明によると「ファイルではなく、データベース上に最新の設計情報が保持される。こうすることで、どんなデバイスからでもXdesignが使える」のだという。XdesignはPCにとどまらず、iPadやiPhone、Android端末のようなタッチスクリーンを搭載するデバイスでも動作する。そのためタッチスクリーンでの操作に完全に対応している。
なお、XdesignはSOLIDWORKSに変わる新たな設計ツールではなく、SOLIDWORKSブランドの1つのツールという位置付けで、デザインイノベーションのための役割を果たすものだという。そのため、「現段階ではSOLIDWORKS自体にジェネレーティブデザインの機能を搭載する計画はない」(バッシ氏)という。
Xdesignは2016年5月にベータテストを行い、ユーザーからのフィードバックを受け、年内の正式リリースを目指したい考えだ。また、リリース後は随時、機能追加やバグFIXが行われ、ユーザーは常に最新バージョンのXdesignを利用することが可能になるという。「従来のデスクトップでの設計にも、Xdesignを利用した設計にもそれぞれメリットはある。どちらだけを使ってもらうということではなく、イノベーションプラットフォームの考えの下、ユーザー自身が自由に選択して、柔軟に設計が行えることを考え、それを目指している」(バッシ氏)。
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