ルノーの新デザインコンセプト『サイクル・オブ・ライフ』はなぜ生まれたのか:クルマから見るデザインの真価(8)(3/5 ページ)
フランスの自動車メーカーであるルノーは、新たなデザインコンセプト『サイクル・オブ・ライフ』のもとでクルマづくりを進めている。1990年代以降、変化してきたフランス車の『らしさ』や、日本市場でのルノー車の受け入れられ方とともに、ルノーが『サイクル・オブ・ライフ』でどのように変わろうとしているのかを読み解く。
『サイクル・オブ・ライフ』のコンセプトをいかにして伝えていくか
『サイクル・オブ・ライフ』の基本的な考え方は、「LOVE(人と人が出会い恋に落ち)」「EXPLORE(二人は冒険の旅に出掛け)」「FAMILY(やがて家族を持ち)」「WORK(家族のために働き)」「PLAY(余暇を楽しみ)」「WISDOM(やがて賢人のごとく成熟する)」というように人生を6つのステージに区切り、それぞれのステージにデザインしたクルマを提供するというのが“基本構想”だ。そしてこの構想を伝え、浸透させていくために、まずはサイクル・オブ・ライフの各ステージを象徴的に表現するコンセプトカーを世の中に問いかけ、その後に量産モデルを登場させるという展開方針を取った。
構想や展開方針が決まれば、次は具体的なデザインへの落とし込みの指針が必要となる。ここでは人を中心に考えるところから、「シンプル」「センシュアル(官能的・肉感的)」「ウォーム(温かみ)」という3つのキーワードが選ばれた。
これらのキーワードに沿って「曲線で構成されるデザイン」を造形要素の特徴とした。加えて、各モデルに共通のファミリーフロントフェイスを設定した。新しいデザイン戦略に基づくモデルには、大きめの菱形のルノー・マークを中心で浮かせたように配置し、そこから左右に翼のように拡がる形状のフロントグリルが与えられている。これは、「一目でルノーであると分かる」ためのアイコンであり、ルノーがこれまでとは違う新しいことをやるという意思表示の目印でもある。
『サイクル・オブ・ライフ』に沿った一連のコンセプトカーは、その第1弾である、LOVEのDEZIR(「パリモーターショー2010」)から始まり、EXPLOREの「Captur」(「ジュネーブモーターショー2011」)、FAMILYの「R-SPACE」(ジュネーブモーターショー2011)、WORKの「FRENDZY」(「フランクフルトモーターショー2011」)、PLAYの「TWIN’Z」(2013年の「ミラノトリエンナーレ」)と「TWIN’RUN」(2013年F1モナコGP開催中のモンテカルロ)へと続き、「フランクフルトモーターショー2013」で公開されたWISDOMの「INITIAL PARIS」で全体のピースがそろった。一連のコンセプトカーがそろってみると、新しいファミリーフェイスは最終的にはスポーツカーから商用車までうまく馴染んでおり、新しいルノーの顔を獲得したことが実感できる。
『サイクル・オブ・ライフ』のコンセプトカー。左から、PLAYの「TWIN’RUN」、WORKの「FRENDZY」、WISDOMの「INITIAL PARIS」、LOVEの「DEZIR」、EXPLOREの「Captur」、FAMILYの「R-SPACE」(クリックで拡大) 出典:ルノー
『サイクル・オブ・ライフ』に沿った量産車としては、LOVEからは4代目となる現行ルーテシア、EXPLOREのキャプチャー、PLAYの新型トゥインゴが発売されており、WISDOMのINITIAL PARISは次期「エスパス」のベースになるとアナウンスされている。現状の日本市場へは、ルーテシアとキャプチャーが導入済み、次は「東京モーターショー2015」でも大々的にプロモーションをしていた新型トゥインゴが導入される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.