モデリングを成功させるために――持続可能なモデリングを目指して:プロジェクトを成功させるモデリングの極意(6)(4/9 ページ)
今回はモデリングで失敗しないだけでなく、さらにモデリングを成功させ、継続するための方法を探ります。失敗しないコツが盾であるならば、成功と持続のコツは矛に相当しますので、これらを学んでモデリングを持続可能(sustainable)なものとしていきましょう。
1. ヒアリングでのコツ――モデルの対象選択はどうすればよいのか
(1)ヒアリングで3回以上同じことを言っていたものはモデル図に採用
繰り返して言及するということは、そこに興味を持っていて、まさにモデリングの中心にしてほしいという要望の表れです。
(2)ヒアリングで明示して重要だと言ったものは採用
明示していますから、これを採用しない訳にはいきません。
(3)ヒアリングで曖昧なものは、さらにヒアリングしてから採否を決定
ヒアリングして曖昧だったものは、すぐにモデリングで不採用にするのではなく、ヒアリングを重ねて、その真意を探りましょう。当たり前だから曖昧にしたままなのか、本当に不明だから曖昧にしたのか、重要なものだから後で決定したいのかなどを探る必要があります。
(4)ヒアリングで抜けや矛盾があるときは、ヒアリングしてから補完
矛盾があるのはわざとそうしているのか、それとも当たり前の事実がこちらには分からないから矛盾や抜けのように思えてしまうのかなどを探る必要があります。
2. モデリングでのコツ――具象化はどのように描けばよいのか
(5)粒度をそろえることを基本とするが、粒度に差があることが重要(統一しない)
モデリングの基本は要素の粒度(詳細度)をそろえることです。意味もなく粒度が違うのは駄目です。しかしここでのテーマは「抽象化と具象化のバランス」で、粒度の統一よりもこのバランスの方が重要です。しかし意味もなく粒度が違うのはNGですので、粒度が違うときはちゃんと理由が説明できることが必要です。
(6)具象化するものを真ん中に置く、重要なものも真ん中に置く
目立てさせたいものは真ん中に置き、そうでないものは端(下部)に配置するのがいいでしょう。
(7)具象化するものは1点だけにする、3個以上あるときは別図にする
具象化するものは1点だけにする原則「1モデル図、1詳細記述」を守ってください。1関数1機能と同じような標語になります(しかし2個までなら許せます)。
(8)抽象化こそモデリングの肝要。時間を掛ける
具象化は猿でもできます(実際はもちろんできません)が、抽象化こそが人間がすることです。ネーミングひとつから、時間を掛けて抽象化してください。
(9)具象化した部分は将来の変更に対応できるように工夫する
具象化すると、仕様変更に弱くなります。その対処が必要になります。
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