印刷会社が車載セキュリティ!? DNPが参入を宣言:オートモーティブワールド2016
大日本印刷(DNP)は、「オートモーティブワールド2016」において、自動車へのサイバー攻撃を防ぐ車載セキュリティソリューションを紹介した。
大日本印刷(DNP)は、「オートモーティブワールド2016」(2016年1月13〜15日、東京ビッグサイト)内の「第4回コネクティッド・カーEXPO」において、自動車へのサイバー攻撃を防ぐ車載セキュリティソリューションを紹介した。
展示したのはスマートフォンアプリなどの堅牢化に用いる「CrackProof」と、マルチデバイス対応のインターネットVPN(仮想プライベートネットワーク)「DNP Multi-Peer VPN」だ。
スマートフォンで広く利用されているアプリだが、自動車メーカーが展開する車載情報機器向けプラットフォームでも、スマートフォンと同様にアプリが配信されている。CrackProofの仕組みを使えば、スマートフォン向けアプリと同様に、車載情報機器向けアプリの不正改ざんを防ぐことができる。
また、自動車メーカーの車載情報機器向けプラットフォームでは、車載情報機器とサーバが通信でつながるだけでなく、利便性を高めるためそのネットワークにスマートフォンやPCなどで情報を取得できるようになっている。DNP Multi-Peer VPNは、通信データを暗号化するソフトウェア開発キットと、クラウド環境またはオンプレミスに設置するVPNマネジメントサーバで構成されており、車載情報機器向けプラットフォームのネットワークへの安全な通信接続の実現が可能だ。
「将来的には制御系もカバーしたい」
大日本印刷は国内トップクラスの印刷会社として知られる。同社は印刷事業の一環としてICカードも手掛けており、そのICカードでセキュリティが重視されることもあって、セキュリティ関連のソフトウェアも提供してきた。今回の車載セキュリティソリューションは、これまでPCやスマートフォン向けに販売してきたものを、自動車業界向けにも展開するという事業方針の表明になる。
現在は、自動車業界へのヒアリングを中心に提案活動を始めた段階。大日本印刷の説明員は「顧客によってまだ車載セキュリティに対するスタンスが違うので、提案活動を通して需要をしっかり掘り起こしたい。自動車向けという観点では、生産ラインの制御セキュリティ向けの展開も考えている」と語る。
CrackProofの対応OSがiOS、Android、Linux、Windowsにとどまること、DNP Multi-Peer VPNが通信ネットワーク向けであることを含め、同社の車載セキュリティソリューションは車載情報機器向けでとどまるように感じられる。しかし「将来的には、車載情報機器などの情報系だけでなく、制御系にも展開を広げたい」(同説明員)としている。
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