「バブル」に沸いた自動運転は「サスティナブル」になれるのか:自動運転技術(3/3 ページ)
自動運転元年ともいうべきさまざまなことが世界各地で起こった2015年。自動運転「バブル」と言ってもいいほどの過熱ぶりだが、今の動きは話して「サスティナブル(持続可能)」なものになっているのだろうか。
現実社会における競争領域とは何か
ADASの延長線上の「自動運転」でも、オーバーライドしない「無人運転」でも、車両本体に装着するデバイスに大きな差はない。カメラやミリ波レーダー、レーザーレーダー(通称ライダー)など、既に量産化されている、もしくは量産化に向けた開発が加速しているセンサー製品を使う。今後はそれらの精度が上がり、自動運転車および無人運転車の量産効果によってセンサー製品の価格は下がる。「東京モーターショー2015」でパイオニアが「近い将来、1万円で売る」としたライダーがその代表例である。
つまり、センサーは量産効果によって価格が低下するので、サプライヤが安定的な収益を継続的に確保するのは難しい。
一方、「本来は協調領域」と思われていた領域が競争領域になるケースが出てきた。その代表例がHEREだ。従来はティア2サプライヤである企業が、自動運転に関するステークホルダーへと大化けした。単なる地図メーカーから、ロケーションクラウドとして自動車メーカーにとって「避けて通れない領域」としてデファクトスタンダード化を狙っている。
しかもオーナーがジャーマン3(ダイムラー、BMW、フォルクスワーゲン)になってしまい、自動車との直接的な接点はコンチネンタルが提供するという「複雑な話」になってきた。プローブ情報を「どこまで協調領域とするのか」など、自動車産業界がこれから解決しなければならない課題は数多い。
2016年、世界各地で自動運転の実証試験が本格化する中、新たな競争領域が生まれるかもしれない。
筆者プロフィール
桃田 健史(ももた けんじ)
自動車産業ジャーナリスト。1962年東京生まれ。欧米先進国、新興国など世界各地で取材活動を行う。日経BP社、ダイヤモンド社などで自動車産業、自動車技術についての連載記事、自動車関連媒体で各種連載記事を執筆。またインディカーなどのレース参戦経験を基に日本テレビなどで自動車レース番組の解説も行う。
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