アクティブセルバランス対応の電池監視IC、48Vシステムを1チップでカバー:車載半導体
日本テキサス・インスツルメンツは、1チップで16個の二次電池セルの充電状態監視と保護を行える「bq76PL455A-Q1」を発表した。電池モジュール/電池パックの実効的な容量を増やせるアクティブセルバランス機能と、48Vシステムに1チップで対応できることを特徴とする。
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2015年12月14日、1チップで16個の二次電池セルの充電状態監視と保護を行える「bq76PL455A-Q1」を発表した。複数のbq76PL455A-Q1を用いることで、二次電池セルを最大256個まで直列接続した電池モジュール/電池パックの充電状態を最適に保つことができる。主に、電気自動車、プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車、スマートグリッドの蓄電システムに向ける。既に販売中で、1000個受注時の単価(参考価格)は14ドル95セント。
bq76PL455A-Q1は、電池モジュール/電池パックを構成する各電池セルの電圧を計測する電池監視ICである。電池セルはそれぞれ特性が異なるため、ある電池セルが満充電になっているのに、他の電池セルは満充電に達していないということが起こる。この状況で充電を続けると、他の電池セルが満充電になっても、既に満充電になっていた電池セルは過充電になりかねない。そこで電池監視ICには、各電池セルの充電状態を均一にするセルバランス機能が搭載されている。一般的な電池監視ICは、放電によってのみセルバランスを行うパッシブセルバランス機能が利用可能だ。
しかしbq76PL455A-Q1は、充電状態が高い電池セルの電力を、充電状態が低い電池セルに充電するアクティブセルバランス機能も集積している。アクティブセルバランス機能は、パッシブセルバランス機能よりも有効に電力を利用できるので、電池モジュール/電池パックの実効的な容量を高められる可能性がある。ただし、アクティブセルバランス機能を利用するには、スイッチマトリクスゲートドライバIC「EMB1428Q」や双方向電流DC-DCコンバータIC「EMB1499Q」などの外付け部品が必要だ。
この他、1チップで16個の二次電池セルの充電状態を監視できることから、ドイツの自動車メーカーなどが採用を進めている簡易ハイブリッドシステムである48Vシステムに最適だという。48Vシステムはその名通り、48Vの電圧でモーターを用いて、エンジンのアシストや減速エネルギーの回生などを行う。このため、電池パックの入出力電圧も48Vが求められる。ここで、出力電圧が3.7V程度の一般的なリチウムイオン電池セルを使うことを考えると、電池パックを構成する電池セル数は12個よりも多くならざるを得ない。
しかし、電池監視ICの多くは1チップで監視できる電池セルの数は最大12個までだ。このため、48Vシステムの電池パックには2チップ必要になる計算になる。最大16個の電池セルを監視できるbq76PL455A-Q1であれば1チップで済むため「48Vシステムに最適」(日本TI)というわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- アクティブセルバランスのリニアと16セル対応のTI、バッテリーモニターICで競演
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の大容量電池パックに用いられるバッテリーモニターIC。「TECHNO-FRONTIER 2013」では、リニアテクノロジーと日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)が新製品をアピールした。 - 日本TIがアクティブセルバランス技術を初公開、EVの電池パックの実効容量を向上
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)が、「人とくるまのテクノロジー展2012」において、アクティブセルバランス技術を初公開した。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の電池パックの実効的な容量や寿命を向上可能な次世代技術である。 - 日立オートモーティブがマキシムの電池監視ICを採用、日産のハイブリッド車に搭載
Maxim Integrated Products(マキシム)は、同社の車載二次電池セル監視ICが、日産自動車の北米市場向けハイブリッドSUV「パスファインダー ハイブリッド」に採用されたと発表した。 - 16セル対応の電池監視IC、専用マイコンとの組み合わせでISO26262対応が容易に
東芝は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)に搭載される大容量二次電池向けに電池監視IC「TB9141FG」と32ビットマイコン「TMPM358FDTFG」を発表した。両ICを用いれば、自動車向けの機能安全規格ISO 26262に準拠した大容量二次電池の監視システムを容易に構築できる。 - リニアが第3世代電池監視ICを発表、「EV/HEV向けでシェア75%が視野に」
リニアテクノロジーは、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)などに搭載される大容量二次電池の電圧を監視するバッテリモニターICの第3世代品「LTC6804」を発表した。新製品の投入により、リチウムイオン電池を搭載するEVやHEVに用いられる電圧監視IC市場で75%というシェア目標が視野に入ってきたという。