アクティブセルバランスのリニアと16セル対応のTI、バッテリーモニターICで競演:TECHNO-FRONTIER 2013
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の大容量電池パックに用いられるバッテリーモニターIC。「TECHNO-FRONTIER 2013」では、リニアテクノロジーと日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)が新製品をアピールした。
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)などに搭載されている大容量電池パックは、数十個〜100個以上の電池セルから構成されている。化学反応を利用する二次電池は、量産品であったとしても容量や特性がそれぞれ微妙に異なる。容量が微妙に少なかったり、多かったりするのである。
大容量電池パックを構成する電池セルを、全て同じ容量、同じ特性を持つという前提で充放電を行うと、電池セル単位で過充電になったり過放電になったりしてしまう。そして、充放電を繰り返すうちに、電池セルの破損や容量劣化が発生する。
この問題を解決するために用いられているのが、大容量電池パックの各電池セルの電圧を監視するバッテリーモニターICである。これによって、過充電や過放電が起こさずに済むので、電池セルの寿命を延ばすことができる。
リニアはアクティブセルバランスICを初公開
「TECHNO-FRONTIER 2013」(2013年7月17〜19日、東京ビッグサイト)では、有力アナログICベンダーであるリニアテクノロジーと日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)が、バッテリーモニターICの新製品を展示していた。
リニアテクノロジーが展示したのは、アクティブ方式のセルバランスに用いるIC「LTC3300-1」である。「ICや評価ボードの実物を一般公開するのは初めて」(同社)だという。
セルバランスとは、大容量電池パックの各電池セルの充電状態を均等にする技術のことである。従来のバッテリーモニターICでは、容量が小さい電池セルが満充電になった後も、容量の大きい残りの電池セルが満充電になるまで充電を続けられるように、容量の小さい電池セルへの充電電流を抵抗器を介して熱として捨てる、パッシブ方式のセルバランスの機能が搭載されていた。
一方、LTC3300-1で実現できるアクティブ方式のセルバランスは、パッシブ方式で熱として捨てていた電力を使って、満充電に達していない残りの電池セルの充電に使うことができる。放電時も、容量が小さい電池セルに他の電池セルから電力を移すこともできる。つまり、パッシブ方式で無駄になっていた電力を有効利用できるので、電池パックの実効容量をさらに高められるというわけだ。
LTC3300-1は、同社のバッテリーモニターIC「LTC680x」シリーズと併用することで、アクティブ方式のセルバランスを実現できる。LTC3300-1の他には、二巻線トランスやFETなどの外付け部品を追加するだけでよい。ただし、LTC680xシリーズは、1個のICで12個の電池セルを接続できるが、LTC3300-1は1個のICで6個の電池セルまでしか接続できない。LTC680xシリーズ1個に付き、LTC3300-1が2個必要になる。
TIは16セル接続とASIL-D準拠で対抗
日本TIは、1個のICで16個の電池セルの電圧を監視できるバッテリーモニターIC「bq76PL455」を公開した。
これまで同社は、バッテリーモニターICとして、6個までの電池セルに対応する「bq76PL536」を展開していた。しかし、bq76PL455の投入により、1個のICで監視できる電池セルの数が2倍以上になった。リニアテクノロジーを含めて競合他社のバッテリーモニターICは、1個のICで監視できる電池セルの数は12個までがほとんど。日本TIの他には、東芝が16個の電池セルに対応する製品を展開している(関連記事:16セル対応の電池監視IC、専用マイコンとの組み合わせでISO26262対応が容易に)。
さらに、自動車向け機能安全規格のISO 26262で最も厳しい安全要求レベルとなるASIL-Dに1個のICで対応できることも大きな特徴となっている。競合他社のバッテリーモニターICは、コンパニオンチップを併用しなければASIL-Dには準拠できない場合が多い。
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