細胞や骨をヒントに生まれた航空機部品、ジェネレーティブデザインと3Dプリンタで実現:未来の設計・製造の姿
オートデスクと航空機製造大手のエアバスは、共同で取り組んできた航空機のキャビン用パーティションの設計・製造に関するこれまでの成果として、3Dプリントされたキャビン用パーティション「バイオニック パーティション」を公開した。
米Autodesk(オートデスク)と航空機製造大手の仏Airbus(エアバス)は2015年12月2日、共同で取り組んできた航空機のキャビン用パーティションの設計・製造に関するこれまでの成果として、3Dプリントされたキャビン用パーティション「バイオニック パーティション」を公開した。
バイオニック パーティションとは、生物の細胞構造や骨の成長過程を模したデザインを生成する独自アルゴリズムにより設計され、AM(アディティブマニュファクチャリング)技術により製造されたもの。独自アルゴリズムを用いて、設計要件に見合った最適形状を導き出すのに、「ジェネレーティブデザイン」と呼ばれる設計アプローチが利用されている。
ジェネレーティブデザインとは、クラウド上のコンピュータリソースを活用し、設計者が設定した仕様や条件をコンピュータで解析し、要求条件に適した形状を導き出して、設計者にフィードバックする新しい設計手法だ。このジェネレーティブデザインをキャビン用パーティションの設計に適用したことで、従来手法で設計、製造するよりも強度を高めつつ、軽量化を実現できたという。
製作されたバイオニック パーティションは、ジェネレーティブデザインの設計手法により、強固かつ軽量なマイクロラティス構造で実現されており、従来のキャビン用パーティションと比較して、45%(30kg)の軽量化を実現。厳しい構造上の要件が求められる航空機部品としての条件を満たすことに成功したという。
バイオニック パーティションの製造には、AMや新素材の開発などを手掛けるエアバスの子会社APWorksのアルミニウム・マグネシウム・スカンジウム合金「Scalmalloy」を採用。仮に、今後製造する予定のA320型機の全キャビンに、今回の新しいデザイン手法を適用した場合、毎年で46万5000トン(t)のCO2を削減できるとし、削減量は1年間で9万6000人分の乗用車のCO2排出量に相当するとしている。
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