事故発生から即座にドクターヘリが駆け付ける、トヨタとホンダが試験運用:車載情報機器(2/2 ページ)
認定NPO法人の救急ヘリ病院ネットワークは、重大な交通事故にドクターヘリを迅速に出動させる救急自動通報システム(D-Call Net)の試験運用を開始する。トヨタ自動車とホンダの一部車種で同システムを利用できる。2018年の本格運用に向けて対応車種や協力病院の拡大、精度向上を急ぐ。
「年間282人の救命効果」
人命救助の成否のカギを握るのは治療までの時間の短さだ。HEM-Netがまとめたドクターヘリの出動事例によると、事故発生から消防が到着し、ドクターヘリが要請され、最終的に治療が開始されるまで平均で38分を要することが分かっている。消防への通報までに5分、ドクターヘリの出動要請までに15分、治療開始まではさらに18分かかっているという。
緊急性の高い外傷(大量出血の場合)は傷を負ってから38分後の死亡率が82%まで高まるため、より迅速な対処が必要になる。
D-CallNetの実証実験の結果、治療開始までの時間を従来より17分短い21分に短縮できたという。これにより死亡率は14%まで低減でき「年間で282人分の救命効果に相当する」(HEM-Net 理事の益子邦洋氏)としている。
2015年11月30日から全国9カ所のドクターヘリ基地病院が参加してD-Call Netの試験運用がスタートする。対応する自動車メーカーはトヨタとホンダの2社のみ。
トヨタの対象車種は、2015年に入ってマイナーチェンジした「ランドクルーザー」「クラウン」「クラウンマジェスタ」、レクサスブランドの「LX」「GS」、フルモデルチェンジした「RX」と新型車両の「GS F」で、「T-Connect」や「G-Link」といったテレマティクスサービスの利用が条件となる。今後は、モデルチェンジに合わせて設定車種を拡大していく。
トヨタの場合先述のヘルプネット対応車をレクサスブランドを中心に約50万台販売しているが、D-Call Net対応については2015年投入の車種からになる。既存のヘルプネット対応車についても「技術的にはソフトウェアアップデートで対応できる」としており、2018年の正式運用開始時にはアップデートを期待できそうだ。
ホンダは2013年6月からメーカー純正カーナビゲーションシステムにD-Call Net対応機能を搭載している。このカーナビは、携帯電話機をBluetoothで接続して通信機能を利用できる、比較的安価なものだ。「アコード」「フィット」などで対応しており、今後は軽自動車でも対応していく方針。現時点で、D-Call Net対応カーナビを搭載する車両の販売台数は約10万台である。
2017年にはD-Call Net対応車の普及台数は「約40万台に拡大する」(HEM-Net)見通し。2018年の本格運用に向けて、自動車メーカー各社に参加を呼び掛けていく。
死亡・重傷確率の算出精度向上が課題
今後の試験運用では、死亡・重傷確率を算出する精度の向上が課題となる。
当面はD-Call Netが示す死亡・重傷確率が5%以上であればドクターヘリを出動させる。一見、重大な事故である可能性が低くても出動するように見える。しかし、現状では確率の精度が低いため「重傷事故なのに出動しないという事態を避ける」(ドクターヘリの担当医師)ことを優先する。
精度を向上するには、事故のより詳細な情報が必要になりそうだ。ホンダの担当者は「ドライバーの年齢や性別、脈拍などの生体情報が役に立つだろう。車体が事故でどう変形したか通報できれば、救出に必要な工具なども想定できる。また、車載カメラで車内を撮影し、乗員の状態を映像で知らせられれば」と話している。
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