「SKYACTIV-G」初のダウンサイジングターボ、排気量2.5lで新型「CX-9」に搭載:ロサンゼルスオートショー2015(2/2 ページ)
マツダは、「ロサンゼルスオートショー2015」において3列シート7人乗りのSUV「CX-9」の新モデルを公開した。新開発の排気量2.5l直噴ターボガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.5T」を搭載し、EPAモードで従来比約20%の燃費改善を実現した。2016年春に北米市場から販売を始める。
世界初の「ダイナミック・プレッシャー・ターボ」
新型CX-9のエンジンSKYACTIV-G 2.5Tは、マツダの新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-G」では初となるターボチャージャー付き直噴エンジンである(ディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D」は全てターボを適用)。現行の初代CX-9が、排気量3.7lの自然吸気エンジンを搭載していることを考えれば、排気量2.5lの直噴ターボエンジンに変更するということは、いわゆる“ダウンサイジングターボ”の採用といえるだろう。
SKYACTIV-G 2.5Tは、Mazda6や「CX-5」に採用している自然吸気の直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.5」をベースに開発しており、ボアやストローク、ボアピッチなどの基本諸元は同じで、インジェクターや燃料ポンプなどの燃料系部品も共通である。その上で、ターボエンジンの課題とされる「ターボラグに代表される低速領域での動力性能の悪化」と「実用燃費の悪化」に対応するためさまざまな技術を採用した。
世界初の技術となるのが、運転条件に合わせて排気の脈動状態を変化させる「ダイナミック・プレッシャー・ターボ」だ。エンジン回転数が1620rpm以下の低速域において、タービンの手前に設置したバルブを絞ることで、各排気ポートからの排気が互いに干渉することを抑制し、排気圧力の脈動を活用して高いタービン駆動力などを得る。一方で、十分な排気エネルギーを得られる高速域ではバルブを開き、通常のターボと同様の脈動の少ない状態で稼働する。
タービンに流れ込む排気の流速や方向を調整するターボチャージャーとしては可変ジオメトリターボチャージャーなどがあるが、ダイナミック・プレッシャー・ターボは排気脈動の制御に着目した点が異なっている。
また、ターボチャージャーの効率を最大化する排気システムとして4-3-1排気を採用している。4-3-1排気では、エンジンの4本の気筒の内、中央に位置する2本の気筒(2番と3番)から出る排気を1つの同じポートに合流させる一方で、外側に位置する気筒(1番と4番)はそれぞれが個別のポートを持つようになっている。これら3つのポートは、クランクシャフトが180度回転するたび常に排気脈動が1回届く箇所となっているターボチャージャーの排気側入り口で合流して1つになる。この4-3-1排気を実現するコンパクトな排気マニフォールドが排気脈動を分離して引き出すエネルギーを最大化する。加えて、排気脈動のたびに隣接するポートからの残留排気の吸い出しを促す効果もある。
これらの他、気筒内での燃焼温度を下げてノッキングを抑制するクールドEGR(排気再循環)を採用して10.5という高圧縮比化を実現した。この値は、ボアサイズが89mmのレギュラーガソリン対応型直列4気筒ターボエンジンとして最高レベルだという。
SKYACTIV-G 2.5Tを搭載する新型CX-9の最高出力は169kW(5000rpm)、最大トルクは420Nm(2000rpm)。現行の初代CX-9は最高出力が204kW(6250rpm)、最大トルクが366Nm(4250rpm)なので、全体的により低いエンジン回転数で出力やトルクが出るようになっている。最高出力については、ハイオクガソリンを使えば186kWまで高めることもできる。
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