次期「SKYACTIV」は2016年度以降に採用へ、電動化技術で燃費をさらに15%向上:エコカー技術
マツダの好調さを支える大きな要因になっているのが、新世代技術「SKYACTIV」とデザインテーマ「魂動(こどう)−Soul of Motion」だろう。これらのうちSKYACTIVについては、さらに進化した「SKYACTIV GEN2」が2016年度以降に登場する見込みだ。電動化技術などを活用し、現行SKYACTIVよりも全社平均燃費をさらに15%高めることが目標になっている。
マツダが2015年4月28日に発表した2014年度(2015年3月期)決算は、売上高が前年度比13%増の3兆339億円、営業利益が同11%増の2029億円、グローバル年間販売台数が同5%増の139万7000台と好調に推移した。
この好調さをけん引したのは、2012年2月の中型SUV「CX-5」から投入を始めた、新世代技術「SKYACTIV」とデザインテーマ「魂動(こどう)−Soul of Motion」を採用した新世代商品群だろう。グローバルでは同社の最量販車である「アクセラ(海外名:Mazda3)」、国内では「2014-2015日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した小型車「デミオ(海外名:Mazda3)」が好調だ。2015年度も、2015年2月末に発売した小型SUV「CX-3」や、同年6月発売予定の新型「マツダ ロードスター(海外名:MX-5)」などの貢献により、グローバル年間販売台数は前年度比7%増の149万台を見込む。
CX-5に始まり、フラッグシップモデルの「アテンザ(海外名:Mazda5)」、アクセラ、デミオ、CX-3、間もなく発売の新型ロードスター、2015年度末に投入する大型SUV「CX-9」により、新世代商品群は7車種にまで増える。そして、SKYACTIV搭載車の販売比率も、2014年度の75%から、2015年度は85%以上に高まると予測されている。
「劇的に燃費を性能を改善」
このようにSKYACTIVと魂動デザインの評価は高い。しかし、販売台数の85%以上まで搭載比率が高まってしまったSKYACTIVを、いつまでも“新世代技術”と呼称するのもおかしな話だ。そこでマツダは、SKYACTIVを進化させた次期SKYACTIVといえる「SKYACTIV GEN2」を、次期中期計画「構造改革ステージ2」の期間中である2016〜2018年度に発売する車両に搭載する方針を示した。
構造改革ステージ2では、2016〜2018年度の3年間で、新型車を4車種、派生車を1車種、合わせて5車種を投入する。SKYACTIV GEN2の導入は、現行SKYACTIVである「SKYACTIV GEN1」が2011年6月にマイナーチェンジした3代目デミオがガソリンエンジンの「SKYACTIV-G 1.3」を採用したのと同様に、一部技術から徐々に適用範囲を拡大していくことになりそうだ。
そして、SKYACTIV GEN2の本格導入は、構造改革 ステージ2が終了する2019年度以降になる。SKYACTIV GEN1が目標としている全社平均燃費の目標値は、2008年比で約30%の向上だった。SKYACTIV GEN2では、「究極の燃焼技術と電動化技術を組み合わせ、劇的に燃費を性能を改善」(同社)し、2008年比で約50%の向上を目指す。SKYACTIV GEN1との比較であれば、約15%の燃費向上を果たすことになる。
SKYACTIV GEN1の燃費向上で大きな役割を果たしてきたのは、直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G」やクリーンディーゼルエンジン「SKYACYTIV-D」といった新開発の内燃機関だ。電動化技術については、キャパシタを使った減速エネルギー回生システム「i-ELOOP」とアクセラで導入したハイブリッドモデルくらいしか貢献していない。
しかしSKYACTIV GEN2では、SKYACTIV GEN1に対して約15%の燃費向上が目標になっている。目標達成のためには、これまで積極的に採用してこなかった電動化技術が不可欠になる。マツダは、電気自動車(EV)「デミオEV」をベースに走行距離延長装置(レンジエクステンダー)を搭載した「REレンジエクステンダー」(関連記事:ロータリーエンジンの横置きが決め手、マツダの「REレンジエクステンダー」)や、水素ロータリーエンジンを搭載する「プレマシー」ベースのハイブリッド車「プレマシー ハイドロジェンREハイブリッド」といった電動自動車を開発した実績もある。SKYACTIV GEN2で、それらの知見がどのように生かされるのか、注目される。
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