既存のETC車載器でGPSよりも高精度の測位を実現、自動運転技術に適用へ:自動運転技術
沖電気工業は、ITS(高度道路情報システム)の路側機に「電波到来方向推定技術」を適用することで、既存のETC車載器を持つ車両や歩行者の位置を検出できる「次世代ITS路側インフラ無線技術」を開発した。±0.5mとGPSよりも高い位置精度を実現可能で、自動運転技術への適用を検討している。
沖電気工業(OKI)は2015年11月17日、ITS(高度道路情報システム)の路側機に「電波到来方向推定技術」を適用することで、5.8GHz帯を使うDSRC(専用狭域通信)通信対応のETC車載器を持つ車両や歩行者の位置を検出できる「次世代ITS路側インフラ無線技術」を開発したと発表した。±0.5mとGPSよりも高い位置精度を実現可能だという。自動運転技術に必要とされる車両位置や走行車線を検出するシステムを、既に広く普及しているETC車載器をそのまま活用して構築できる可能性がある。
次世代ITS路側インフラ無線技術は、ETC車載器から送信された電波を到来方向推定アンテナモジュールで受信し、アンテナモジュールを構成する各アンテナ素子の経路差から生じる受信信号の遅延量によって電波到来の方位を推定するものだ。
ETC車載器の位置特定には、到来方向推定アンテナモジュールと到来波推定装置を備える路側機が複数必要になる。検知範囲は、一般的なETC車載器のDSRC通信と同様に、路側機から30m四方となっている。
同社が次世代ITS路側インフラ無線技術を用いて行った測位実験では、30m四方のDSRC通信領域内において、ほぼ±1mの測位精度を確保できたという。また、路側機の設置設置条件などによっては±0.5mの測位精度を実現できるとしている。これは、一般的なGPSよりも高い測位精度になる。さらに、GPSと比べて、高精度の測位エリアの形成や測位遅延低減などの優位性があることも確認した。
なお到来方向推定アンテナモジュールは8素子のリニアアレイで、素子間隔は25mm。スナップショット数は4096で、サンプル周波数は40MHzである。
OKIは、次世代ITS路側インフラ無線技術について、自動運転技術への応用の他にも、ドローンをはじめとするロボットの操縦者位置探索などへの展開も検討している。
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