トヨタが満を持して投入した「Toyota Safety Sense」は“普及”こそが使命:安全システム Toyota Safety Sense 開発担当者 インタビュー(4/4 ページ)
トヨタ自動車が2015年4月から導入を始めた新開発の運転支援システム「Toyota Safety Sense(TSS)」。安価で高機能なこともあり、市場から高い評価を受けている。そこで、TSSの開発を担当したトヨタ自動車 制御システム開発部 第2制御システム開発室長を務める山田幸則氏に、TSS開発の背景などについて聞いた。
「必要があればステレオカメラを使う」
MONOist トヨタ自動車では、これまでも運転支援システムを提供してきました。それらの既存技術は、TSSにどのように生かされているのでしょうか。
山田氏 トヨタ自動車の運転支援システムの開発は、レクサスLSのミリ波レーダーやステレオカメラを使うシステムのように技術の最先端を行く方向性と、今回のTSSのように小型化やコスト削減を進めて普及させられるようにする方向性の2つに分かれます。
例えば、歩行者対応PCSについて言えば、レクサスLSで先行して実現したものをTSSPにどのように展開するのかという開発になります。センサーで検知した結果を受けて、各車載システムをどのように制御すれば歩行者対応PCSとしての動作につなげられるのかといったノウハウや経験はそのまま生かすことができています。
ただしレクサスLSで用いているステレオカメラによる歩行者認識を、TSSPの単眼カメラにそのまま適用することはできません。
レクサスLSのステレオカメラは、車両や歩行者といった特定の対象物を認識するというよりも、車両の眼の前にある立体障害物全てを認識するという考え方の基に検知を行っています。ステレオカメラですから、距離情報もかなり正確に検知することができます。
これに対してTSSPの単眼カメラでは、車両や歩行者といった特定の形状を検知する手法をとっています。これはTSSPのため、新たに開発しました。
MONOist 各社が運転支援システムの開発を進めていますが、ステレオカメラを手掛けている自動車メーカーはそれほど多くはありません。トヨタ自動車はその数少ない1社です。今回のTSSでは単眼カメラを使いましたが、今後ステレオカメラを採用する可能性はあるのでしょうか。
山田氏 ステレオカメラを選択肢から排除したわけではありません。距離情報がとれるなど、ステレオカメラにはステレオカメラの良さがあるので、運転支援システムの新機能開発を進めていく上で必要になれば使っていくことになるでしょう。
ただステレオカメラには搭載性という課題があります。普及を目標とするTSSの場合、多くの車両に搭載していく必要があり、あらゆる車両に搭載しやすいという意味で優位性のある単眼カメラを採用しました。
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