第44回 超高速シリアルリンク:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(1/4 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第44回は超高速シリアルリンクについて解説する。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2014年11月号の記事を転載しています。
1.PCI Expressより高速なもの
PCI Expressは普及度やその高速性などから、高速伝送規格の代表といえます。実際、2008年に制定されたUSB 3.0では、伝送線路の規格は2006年に制定されたPCI Express Gen2の規格をそのまま使っています。しかし、PCI Express規格は“最速の”伝送規格ではありません。
最新のPCI Express規格は2010年に規格化されたPCI Express Gen3で転送速度は8Gbps(クロックは4GHz)です。しかしその後、2013年に規格が発表されたUSB 3.1はPCI Express Gen3より高速の10Gbps (クロックは5GHz)となっています。現在はUSBの方がPCI Expressより高速なのです。
2015年にはPCI ExpressがGen4となり、16Gbpsに高速化されます。しかし現在でもPCI Express Gen 4より高速なデータ転送は多く使われています。
テレビの解像度はハイビジョンや次世代の4Kテレビが販売され、試験放送も始まっています。さらに8Kテレビまでが開発されています。
現在のフルハイビジョンと比較し、4Kテレビでは、データ量は4倍、8Kテレビでは16倍となります。
現在、ビデオ信号の送受信にはHDMIケーブル(図1)が使われています。HDMIはシリアルデータ転送です。
HDMIはBlu-rayレコーダー/プレーヤーなどとテレビを接続する規格です。テレビの内部でもチューナーで受信したデジタル放送データを処理して、動画データに復元する内部回路では、多くの基板内シリアル転送が使われています。
当然、これらのシリアル転送は画像が4K、8Kになれば転送速度には、4倍、16倍が要求されます。このビデオでは、ビデオ・オン・デマンドが普及してきています。ビデオ・オン・デマンドはコンピュータを使ったデータサーバからデジタルビデオ信号をユーザーに送信します。テレビ局だけではなく、レンタルビデオやYouTubeをはじめとする多くのビデオ信号がネット上にあふれています。
また、スマートフォンの普及と高性能化により、文字だけのメールから、動画を送る通信も飛躍的に増大しています。これらの画像送通信もハイビジョン化が進み、ファイルサイズが急速に増大しています。日本では数が少ないのですが、アメリカでは、巨大なデータセンターが次々と建造されています(図2)。
これらのセンターでは多くのサーバが稼働しています。GoogleやAppleでは自社のサーバをスマートフォンやPCのユーザーのデータを格納する場所として開放しています。特にディスクなどの大容量ストレージのないスマートフォンでは、カメラで撮ったり、メールでやりとりした大量の写真や動画をしまっておく場所として、クラウドは必須の機能です。
データセンターのサーバは、非常に多くのユーザーのアクセスに対し即座にデータのやりとりを行うため、非常に高速なデータアクセスが要求されます。
これら多くの用途に使われている高速シリアルデータ転送の代表的なものについて紹介しましょう。
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