トヨタ生産方式と設備保全、IoT活用をどう考えるか:トヨタ生産方式で考えるIoT活用(2)(4/4 ページ)
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説していきます。第2回となる今回は、設備保全へのIoT活用のポイントについて紹介します。
設備稼働情報、出来高、品質に関する情報を集める
まず収集すべき情報としては設備稼働情報(設備稼働時間、停止時間、段取替え時間)、出来高情報(ショット数)、品質情報(温度条件、不良原因別不良数)となります。
このようにIoTを活用して遠隔地の情報収集を行い、統計による的確な意思決定の仕組みが構築できるようになれば多くのメリットが生まれます。例えば国内拠点だけでなく、海外拠点での生産も同様に管理し、生産拠点間で工程のフレキシブルな移管ができるようになり、サプライチェーンの最適化につなげることも可能です。
設備保全管理へのIoT活用がもたらす効果
次にIoTにより設備保全の最適化を図るアプローチについて説明します。製造条件や加工時間などの原単位情報に関する基準は、一度決めたら固定している場合が多いと本稿の冒頭部分で説明しました。IoTにより製造情報を継続的に収集することにより、良品や不良品が発生する製造条件や加工時間などの原単位の統計管理も可能になります。そうすることで、適宜季節変動による基準値の最適値を変動させることも可能になってきます。
こうしたIoTを活用した次世代の設備保全管理の実現方法についてですが、既存の設備では収集できる情報も限定され、情報連携に対するコストも大きくなる傾向にあります。新たに工場内にネットワークを敷設する、無線で情報収集するなどの通信手段の選択も必要となります。しかし最近の設備では収集できる情報も多くなっており、簡単な設定で済むことも多いです。
また昨今、国内生産回帰の機運も高まっています。これに伴い新規設備投資を行う際は、設備からの情報収集項目と活用項目を事前に考慮した上で、新規設備導入を行うと良いのではないでしょうか。最近では新規設備の導入について、生産技術部門とIT部門が連携するという取り組みも多く聞くようになりました。
設備保全におけるIoT活用を低コストで実現にするためには、全てを設備メーカー、ITベンダー任せにするのでなく、自社の人材の育成することも重要です。最初は知識がなく外部に委託しても、導入後のメンテナンスは少なくとも自社で実施できるようにするべきです。
以上で設備保全にIoTを活用する方法についての説明を終わります。次回は品質保証におけるIoTの活用手順について紹介します。
筆者紹介
株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)
NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、
原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。
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