製造業のIoT活用、他社に“差”をつける考え方:もうけを生む製造業IoTの活用手順(1)(4/4 ページ)
製造業で活用への注目が集まるIoT。しかし、具体的にどういう取り組みを計画すべきなのか戸惑う企業が多いのではないだろうか。また、IoT活用を企業としての利益に結び付けるにはどうしたらよいかという点も悩ましい。本連載「もうけを生む製造業IoTの活用手順」ではこうした製造業のIoT活用のポイントを解説していく。
自社の現状を把握した中長期活動プランの策定を
とはいえビジネスモデル革新の目標が決まっても、すぐに実行というわけにはいかない。なぜなら期待効果を得るためには、センサーや通信端末の増設・展開やデータの蓄積などに数年間かかる場合もあるからだ。
期待効果の実現に当たっては、設備、人材やナレッジ、情報管理や標準化、部門横断での業務プロセス、外部との連携など、さまざまな面での準備が必要になる。今どこまでの整備ができているのかなど、現在の自社の立ち位置や状況を把握した上で、早く効果が出る取り組みから着手する中長期的な計画を持って推進することが望ましいだろう。
また、先進的な企業の取り組みを見てみると、IoTの活用の企画推進をするに際には以下の項目に配慮している場合が多い。
- 部門横断型の企画検討する体制を作って、顧客や取引先を巻き込む
- ビジネスモデル革新としての目指す期待効果を明確化する
- 自らの立ち位置を把握して、中長期的な活動プランを持つ
焦らず現状の把握と計画性を大切に
製造業へのIoT活用は米国・欧州で先行している印象はあるが、決して焦る必要はない。日本の製造業は、部門ごとにセンサーデータの活用に関する豊富なナレッジを蓄積している。海外企業に比べてアドバンテージがある場合は少なくない。焦って場当たり的な対応に走らず、現状を踏まえつつ計画的に取り組むことで、IoT活用で高い成果を生み出す日本製造業が多く登場するのではないかと感じている。
次回、次々回の連載では、生産革新領域、サービス革新領域について、ビジネスモデル革新の目標設定と中長期の活動プランの策定をどのように進めることが現実的かを、企業での取り組みを例に紹介していく。
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