製造業のIoT活用、他社に“差”をつける考え方:もうけを生む製造業IoTの活用手順(1)(2/4 ページ)
製造業で活用への注目が集まるIoT。しかし、具体的にどういう取り組みを計画すべきなのか戸惑う企業が多いのではないだろうか。また、IoT活用を企業としての利益に結び付けるにはどうしたらよいかという点も悩ましい。本連載「もうけを生む製造業IoTの活用手順」ではこうした製造業のIoT活用のポイントを解説していく。
IoT活用をビジネスモデルの革新と捉える
まず製造業へのIoT活用を技術面から整理してみる。その概要を以下の図1に示す。
- センサーによるデータの「収集」
- M2Mやクラウドを活用したデータの「蓄積」
- 機械学習・人工知能(AI)などの技術を駆使した「分析・自動化」
- 分析結果のリアルな世界での「活用」
技術的な要素を簡潔に整理すると、上記の4つの項目に分けることができるだろう。そしてこれらの各項目が連動するための技術要素と、その連携プロセスまでを含めた全体がIoTということになる。それぞれの要素技術は、性能、データ容量、使い勝手、価格が格段に改善したことで応用領域が広がってきたが、基本的には以前から利用されている技術であるものが多い。だからと言って「既に利用しているもの/やっていること」とばかりと考えてしまうと、変革のチャンスを見逃してしまいかねない。
また「活用」の項目においては、ロボット、ウェアラブルデバイス、AR(仮想現実)、3Dプリンタなど、新しい技術への活用が検討されていることが多い。しかしこうした新技術だけに目を奪われ、手段が目的化してしまっては、実効性が出てこない。IoTの活用を指示されたからといって、従来の延長で更新投資や新設備の導入を図る向きもあるが、それでは現場の改善にはなっても、経営が求めるような利益の創出にはつながらないことが多い。
革新の鍵は「Cyber Physical System」にあり
ではどのように考えればいいのか。それはIoT活用を考える上で重要になるキーワード「Cyber Physical System(CPS)」を考えると分かりやすい。CPSとはインターネットおよびコンピューティングの力(サイバー空間)と、実際の世界(フィジカル空間)を結び付けたシステムを意味する。図1の右側で示したように、まずフィジカル空間の機器・施設の情報をデジタル化してサイバー空間に取り込み、人工知能(AI)などで分析を行う。その結果をリアル空間に戻して活用するという一連のサイクルがCPSの概要だ。
CPSが実現すれば、サイバー空間に蓄積されたデジタル情報は、空間の距離や組織の壁を越えて活用することが可能となり、従来の枠組みを越えた最適化の機会を生み出す。部門間・工場間などの企業内の連携に始まり、企業と顧客・取引先、業界内の企業間、企業と社会へ――といった従来には少なかった新しいつながりによって、ビジネスモデル革新の機会が生み出されていく。
IoTへの投資についてはセンサー、通信端末などの設備まわりが意識されるが、それだけでは得られるデータ量を増やすことはできても、つながりを活用した分析で新しい価値や利益を生み出すことは難しい。IoTを活用したビジネスモデル革新を実現するには、センサーデータを既存の業務データ(各種マスターデータ)と関係付けた分析が必要であり、情報システムや業務プロセス改革との連携が不可欠になってくる。
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