トヨタが次世代レーザースキャナーを3分の1に小型化、自動運転車に適用へ:自動運転技術
トヨタ自動車は、豊田中央研究所と共同開発している次世代レーザースキャナーを披露した。容積を従来比で3分の1まで小型化しており、自動運転車への適用を検討している。
トヨタ自動車は、2015年10月8日に東京都内で開催した安全技術説明会において、豊田中央研究所と共同開発している次世代レーザースキャナーを披露した。容積を従来比で3分の1まで小型化しており、自動運転車への適用を検討している。
この次世代レーザースキャナーは、赤外線を用いるレーザーレーダーの1種で「SPAD LIDAR(Single Photon Avalanche Diode Light Detection And Ranging)」と呼ばれている。
現行の運転支援システムに用いられている一般的なレーザーレーダーは、赤外線を送るレーザーダイオード(LD)と物体に反射して戻ってくる赤外線を受光するフォトダイオード(PD)を同軸上に設置している。このため、赤外線を送る方向の障害物の有無しか検知できず、車両や自転車、歩行者の違いを認識することは難しい。
これに対してSPAD LIDARは、障害物の位置・形状を高精度に検出できるレーザーレーダーである。1個のセンサーユニットで、赤外線を使った距離画像(センサーから障害物までの距離情報を含む画像)を202×96画素で取得できる。また、可視光を使用する車載カメラとは違い、赤外線を用いているので昼夜問わず同じ精度で検知できることも特徴になっている。なお、センサーとしての検知距離は約60m、水平方向の検知範囲は約55度だという。
SPAD LIDARは、2014年9月開催の「第21回ITS世界会議デトロイト2014」で初公開されている。今回披露したものは、容積が3分の1になるなど大幅な小型化を果たしており、より車載を意識したユニット化が図られた。外形寸法は、幅67×奥行き177×高さ73mmである。
高性能とコスト削減が特徴も課題が残る
SPAD LIDARの最大の特徴は、LDとPDの組み合わせが1組でも、垂直方向に広い範囲の検知を行えることだ。通常のレーザーレーダーの場合、LDとPDの組み合わせが1組だと、垂直方向の分解能は1画素分にしかならない。SPAD LIDARの場合、LDとPDの組み合わせが1組でも垂直方向の検知を16画素分の分解能で行うことができる。さらに、6面ポリゴンミラーを使って垂直方向の検知範囲を6倍に拡大することで、96画素分の分解能を実現している。
「SPAD LIDAR」による検知結果。写真の右側に設置したSPAD LIDARによる検知結果を、写真の左側のディスプレイに表示している。以下の動画では、赤丸で示したカメラを持つ記者の動きが捉えられているのが分かる(クリックで拡大)
SPAD LIDARのメリットになるのが、LDとPDの組み合わせが1組だけで済むことによるコスト低減だ。さらに、素子製造に安価なCMOSプロセスを適用できることもコスト低減につながる。「ただし、現在の開発品は、6面ポリゴンミラーというメカニカルスキャン方式を用いているので、コスト削減の効果に限界が出てくる。今後は、この課題を克服する必要が出てくるだろう」(トヨタ自動車の説明員)という。
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