ウェアラブルはB2Bで“躍進”するか:CEATEC 2015(2/2 ページ)
スマートウォッチなどウェアラブルデバイスは「ガジェット好きが注目するアイテム」というイメージを持たれがちだが、その印象は変わりつつある。CEATEC JAPAN 2015の会場で“ウェアラブルデバイスの今”を追う。
もう1つ、ウェアラブルの需要として目立つのが、製造現場のハンズフリー化促進だ。以前からハンズフリー化への需要はあり、富士通研究所が手書き入力機能とNFCタグリーダーを搭載した指輪型ウェアラブルデバイスと単眼式ヘッドマウントディスプレイを開発している他、米GEもジェットエンジン装備にスマートグラスを活用する事例を公開している。
CEATECの会場ではエプソンが2015年9月より販売を開始した、業務用スマートグラス「MOVERIO Pro」(BT-2000)を大々的にアピールする。同社は以前よりコンシューマ向けスマートグラスを製品化していたが、BT-2000では作業マニュアルの表示や遠隔地からの作業支援、AR(拡張現実)を使ったナビゲーションといった、作業現場での利用を想定した機能を搭載している。
注目すべきは各種機能の搭載よりも、各社と協業しての“現場対応ソリューションの提供”だ。国際航業からは屋内外を問わない測位モジュール、ビッグローブからはBT-2000との組み合わせを前提としたモバイルルータ、iDeepソリューションズからは本部と現場をつなぐ映像/資料共有ソリューションが提供されており、ウェアラブルデバイスで現場の作業効率を向上させる現実的な提案が行われている。
ここではB2Bの「健康/安全管理」「製造現場の補助」という2つを挙げたが、それ以外にも“ウェアラブルである必然性”を持った製品やサービスが展示されている。
近畿日本ツーリストはサービスを開始したスマートグラス(エプソンの“MOVERIO”「BT-200」)を使用した「スマートツーリズム」を紹介しているが、これは現存しない建造物を跡地にオーバーレイ表示する。オムロンヘルスケアが開発中の張り付け型体温測定器は高齢者や乳幼児の体温変化を敏感にとらえ、屋外作業者の熱中症予防にも利用できる。これもウェアラブルなデバイスであることで実現する、必然性の高い需要の掘り起こし例だ。
ここで紹介したウェアラブルデバイスは“小さなコンピュータを腕に巻き付けました”といった単純な発想から生まれたモノではない。センサーなど構成するデバイスの進化や市場変化のリサーチなど、入念な準備を経て姿を現したものだ。そうした意味では、流行語の印象を持たれてしまう「ウェアラブルデバイス」というよりも、新たな次元に突入した「ウェアラブルコンピューティング・デバイス」とも表現できる。
FitbitやGoogle Glass、Android Wear、Apple Watchなどの登場で注目された“ウェアラブル”だが、Apple WatchとHERMESとのコラボレーションモデルが登場するなどB2Cの領域ではファション性や価値観の加味といった機能面以外での差別化が目立つようになり、B2Bの領域では安全管理や生産性向上といった、企業活動の必然性を満たすための手段としてウェアラブルが選択されつつある。ただ市場も技術もまだ未成熟であることも間違いなく、向こう数年はウェアラブルを巡るさまざまな製品やアプローチが登場するだろう。
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