政府主導のモノづくり革新は、日本の製造業に“ワクワク”をもたらすか(前編):デライトものづくり(2/3 ページ)
安倍政権が推し進める経済再生政策で重要な役割を担う「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」をご存じだろうか。「日本が勝てる領域において戦略的にイノベーションを創出する」という目的をもとに創出されたプログラムだ。現在10プログラムが進行中だが、その1つである「革新的設計生産技術」部門が、公開シンポジウムを開催した。
超上流デライト設計技術とは?
それでは、設計分野の革新を目指す「超上流デライト設計技術」とはどういうことを指すのだろうか。
現在の設計開発は、既に製品の形がある程度定まったところから始まる場合が多い。そのため、設計段階に入った時には新たな価値を想定したモノづくりができにくい状況にある。これらを改善するため、現在の設計段階のもっと前の段階(超上流)から製品開発をスタートし、それらを形にできるような新たな設計スタイルを求めるのが狙いだ。これらを効率よく進めるために、各種ツールや手法の開発や活用方法の定型化などを進めていく。
例えば、顧客ニーズや技術ニーズ、シナリオや背景、類似成功パターンなどの条件から現場課題やニーズ、気付きなどを獲得。それをデザイン思考や統計手法、ビッグデータ解析やAI(人工知能)、シミュレーションなどの各種探索手法を活用して製品の形に仕上げていくというような流れだ。これらの取り組みの中でイノベーションにつながる設計手法のベストプラクティス(優れた事例の形)を生み出していく。「顧客のニーズの先にある付加価値を実現するのに最適な設計手法を確立する」と佐々木氏は述べている。
革新的生産・製造技術とは?
これらの設計により生み出したものを実際に製品にするために必要になるのが「革新的生産・製造技術」である。3Dプリンタなど新たな製造技術が登場してきているが、これらの新たな価値創出を狙う設計側の思想を形にするために必要な製造能力の獲得を目指す。
主に「従来製造できないものを製造する技術」「新しいアプリ、製品、システムの価値を高めるための組み合わせ製造技術」「開発・製造期間の短縮化・低コスト化」の3つの切り口で技術開発を進める。具体的には以下の通りだ。
従来製造できないものを製造する技術
- 難加工材、複合材料、新たな材料を用いた高強度、長寿命などの高付加価値を生む技術
- 従来の加工技術の飛躍的な機能・性能向上のつながる新たな加工技術
新しいアプリ、製品、システムの価値を高めるための組み合わせ製造技術
- 従来にない機能や形状を持った製品を創出可能とする新たな技術と、従来加工技術の複合化・システム化
- 複雑加工現象の解明
開発・製造期間の短縮化と低コスト化
- IT(IoT)活用により価値・概念設計やユーザーニーズを迅速に反映可能な製造技術
- 金型を不要とするなど製造プロセスの大幅な短縮を可能とする製造技術・試作システム
イノベーションのスタイルを生み出す
これらの超上流デライト設計技術と革新的生産・製造を密接に連携させることで、新たなモノづくりの姿を作り出すことを目指す。佐々木氏は「世界でさまざまな製造業革新の動きが進んでいるが、日本ならではの“イノベーションを生み出す形”のようなものを作り出したい」と述べている。
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