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診療記録からIoTデータ連携のハブへと進化する電子カルテ医療機器開発者のための医療IT入門(3)(2/3 ページ)

医療機器開発者向けに、医療情報システムに代表される医療ITの歴史的背景や仕組みを概説する本連載。第3回は、診療プロセスの中核を担う電子カルテシステムを取り上げる。

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日本では「e-Japan戦略」が契機に

 日本の場合、医師法第24条に基づいて医師が患者ごとに作成する診療録を、紙から電子媒体に置き換えて記録/保存(保存期間は原則5年)することが、電子カルテ導入の動機になってきた。特に、1999年4月の厚生省通達(「診療録等の電子媒体による保存について」)により、以下の3条件を満たせば、診療録の電子媒体への保存が認められたことが、大きな契機になった。

  • 真正性:情報が完全/正確で信頼でき、作成/変更/削除の所在が明確にされていること
  • 見読性:情報を必要に応じて肉眼で確認できる状態に容易にできること
  • 保存性:情報が復元可能であること

 さらに2001年、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が策定した「e-Japan戦略」を受けて、厚生労働省が「医療のIT化のグランドデザイン」の中で、2006年度までに400床以上の病院、全診療所の6割以上に電子カルテを導入することを目標に掲げた。

 それに合わせて、経済産業省の「先進的情報技術活用型医療機関等ネットワーク化推進」(2000年度補正事業)、「医療情報システム高度化モデル事業」(2001年度)、「医療の情報化関連予算」(2002年度)、厚生労働省の「地域医療機関連携のための電子カルテによる診療情報共有モデル事業」(2002年度)、「電子カルテシステム等の導入促進」(2002年度補正事業)、「地域連携のための電子カルテ導入補助事業」(2003年度)など、さまざまな電子カルテ導入支援策が実施された。

 電子カルテの相互運用性や標準化に関しては、厚生労働省の「標準的電子カルテ推進委員会」や「保健医療情報標準化会議」などが中心となって、用語・コードの標準化(例:標準病名コードマスター、薬品コードマスター)や情報交換規約の標準化(例:DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)、HL7(Health Level 7))を推進してきた。

 厚生労働省のデータによると、400床以上の病院の電子カルテ導入率は、2002年度の2.9%から2008年度には38.8%まで増加した。ただし、一般病院全体の導入率は2008年度で22.7%にとどまり、現在も、中小規模の医療施設におけるカルテの電子化が大きな課題となっている。

電子化された診療録からのステップアップが日本の課題

 米国と同様に日本でも、電子カルテに関する統一的な定義はない。例えば、2003年に公表された「電子カルテの定義に関する日本医療情報学会の見解」(関連資料、PDFファイル)では、診療録の全ての情報を電子的に記録するものを「ペーパーレス電子カルテ」、情報の全てではないが主たる情報種を電子的に記録するものを「通常の電子カルテ」と定義している。他方、厚生労働省が2005年に公表した「標準的電子カルテ推進委員会最終報告」(関連資料、PDFファイル)では、診療録などに記録された診療情報(診療の過程で得られた患者の病状や治療経過などの情報)を電子化し、保存された診療録自体を「電子カルテ」、それを実現するための医療情報システムを「電子カルテシステム」と定義している。

 日本の電子カルテに含まれる情報についてみると、医師法、歯科医師法、健康保険法および関連規則に規定された診療録の具体的な記載事項として、受診者欄(氏名、生年月日、性別、住所など)、被保険者証欄(保険者番号、被保険者証の記号・番号など)、傷病名欄(傷病名、職務上/外の区分、開始/終了など)、公費負担番号、備考欄、既往症欄(既往症、原因、主要症状など)、処置欄(処方、処置など)、診療の点数欄(種別、月日、点数、負担金徴収額など)がある。その他、付帯情報として、医用画像、波形データ、紹介状、説明書・同意書、手術記録、看護記録などが収録される。医療機器を出力ソースとするデータは、付帯情報に含まれることが多いが、どのレベルまで収録するかは、個々の医療機関の考え方によって異なるので、要注意だ。

 日本の病院の電子カルテの主要機能をみると、カルテ情報の入力と入院/外来/病歴の情報管理を担う診療情報管理機能、マスター管理機能、辞書管理機能、システム管理機能、秘密保護機能、インタフェース機能などが挙げられる。前述の米国の電子カルテシステムと比較して共通する機能が多いが、ワークフロー機能や臨床意思決定支援機能はあまりカバーされていない。

 昨今、電子カルテシステムの普及とともに、従来スタンドアロンで利用されていた医療機器を、院内ネットワークやセンサー/M2M(Machine-to-Machine)ネットワーク経由で電子カルテとデータ連携させながら、臨床現場の診断や治療に活用するケースが増えている。

 電子カルテ側からみると、システムの入出力デバイスが、PCやスマートフォン/タブレットから医療機器へと拡大することを意味しており、デバイスの資産管理やユーザー認証/権限管理、キャパシティープランニング、データバックアップなども複雑化することになる。医療機器と電子カルテのデータ連携を強化する際には、現場で利用する医療スタッフが受けるベネフィットと運用管理の負荷などのリスクとのバランスを調整しながら、最適化を図ることが求められる。電子カルテの使い勝手やレスポンス時間の変化は、現場の作業効率や患者満足度に影響が及ぶので、注意が必要だ。

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