なぜIoTなのか、トヨタ生産方式の課題から考える:トヨタ生産方式で考えるIoT活用(1)(4/5 ページ)
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。日本的な“人の力”に頼った手法に見られがちですが、実はトヨタ生産方式にもIoT(Internet of Things、モノのインターネット)は適用可能です。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説します。
製造部門中心のコスト管理が増える
先述した課題により、新製品の立ち上げ期間が十分に取れないまま、量産に入ってから製造部門が中心となって目標コスト内での生産を行わなければならないケースが増えています。生産ラインの立ち上げ時点から速やかにモノづくりを行わなければならないが、在庫の増加により限られたスペースの中で物の移動を小まめに行いつつ、目標の不良率や設備可動率を確保するために悪戦苦闘しているのが現状です。
また、国内での生産能力には限界があるため、海外に生産を移管したいものの、海外における熟練工の育成には手が回らないといった状況も見かけます。
自動車部品メーカーなどで多く行われる素材加工の工程において、日々の生産を安定させるためにはいかにロスを少なくするかが最も重要になります。競争力を確保する上では、不良やロスを減らし、安定的な設備稼働につなげることが強く求められています。しかしトヨタ生産方式を採用している製造業は三現主義を重視する傾向にあり、現場の実態が現場でしか把握できない場合も多いのが現状です。
従って品質や生産状況を把握するための日報記録、品質記録、設備点検記録が紙での管理にとどまり、生産状況、品質状況、設備稼働状況は現場のあんどんで把握できますが、その詳細までは定量的に把握、分析できていない事例も多く見かけます。
現場では大型モニターに生産数、設備可動率が表示されていますが、これは「その時点のみの情報」であり、このままでは傾向値を把握し未来を予測するといった「データ活用」と呼べるレベルには至っていません。そもそも現場もフル稼働状態になり、管理・監督者まで生産ラインに入ってフォローをしているのが常態化しているため、予防に目を向ける余裕がないのが現実です。
さらに生産現場で発生する問題を解決できる専門スタッフは限られており、また解決策を立案するにはある程度、現地・現物・現実の状況を精緻に観察する必要があるため、拠点が増え管理する対象項目が増えるほど、改善活動は遅々として進まないという状況にあります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.