インダストリー4.0など次世代モノづくり時代の企業情報システム像:インダストリー4.0(3/3 ページ)
IoT時代に突入し、ドイツからはインダストリー4.0、GEからはインダストリアル・インターネットといった、製造業の新たなビジョンが提示された。それら、次世代モノづくりに関わる有力ITベンダーの戦略分析から、矢野経済研究所では、IoT時代の企業情報システム像をまとめた。
ソフトウェアベンダーの動向
PLM世界市場で、最大のシェアを持つのはダッソー・システムズである(矢野経済研究所調べ)。同社は、2013年に有力MOM/MESベンダーであるアプリソ社を買収し、当該領域のソリューションも手に入れた。現在、アプリソはダッソー・システムズのデジタルファクトリー「DELIMIA」に統合されている。ユニークなのは、ダッソー・システムズは素材開発の企業を買収している点だ。製造業にとって、新素材の開発は必要不可欠ということから、サイエンス寄りの分野にまで手を伸ばしている。
また、シーメンス(シーメンスPLMソフトウェアが同シェア2位、矢野経済研究所調べ)も有力MOM/MESベンダーのキャムスター社を2014年に買収している。シーメンスは制御機器の大手でもあり、上流から下流まで一貫して製品を提供できるベンダーである。
この2社は事業領域の範囲を、ほぼエンジニアリング領域に絞っており、デジタルファクトリーやMOM/MESのソリューションをカバーすることにより、設計から製造に至る、モノづくりに必要なツールをエンド・トゥ・エンドでそろえることに注力している。
同シェア3位のPTCはデジタルファクトリーおよびMOM/MESのソリューションがなく、やや製造実行系に弱かった。しかしながら、IoT基盤やSLM(サービス ライフサイクル管理)に事業領域を拡大することにより、次世代のモノづくりを実現するITソリューションを提供しようとしていることが分かる。
PTCはIoT基盤ベンダーであるThingWorx社を2014年に買収した。PTCは2015年のイベントで、自転車に7つのセンサーを取り付け、そのセンシングデータをThingWorxのIoT基盤を経由して、それと対をなすデジタルな自転車(デジタルツイン)へリアルタイムに反映させるといったデモを公開している。
富士通は、ダッソーやシーメンスが会社自体が製造業向けソリューションに特化しているのと異なり、会社全体としてはあらゆる業種を相手にしている。ソリューションも総合ITベンダーとして、自社製品のみならず他社製品を扱うなどカバー領域は広い。
国内では富士通が以前より展開するバーチャルファクトリー「VPS」、生産ラインシミュレーター「GP4」について、PLMやSCMなどとの連携強化を打ち出しており、デジタルツインの実現では負けていない。
SAPはERPを中心としており、PLM、ビュワー/DMUなどのソリューションをそろえることにより、エンジニアリング系情報との接続性を意識してはいるが、CAD/CAM/CAEなど、コアなエンジニアリング系ツールはカバーしていない。しかしIoT基盤など全業種対応するソリューションには強みを持ち、製造業にもバリュー提供を図る。
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