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「H-IIAロケット29号機」公開(前編)――29号機で何が変わったのか見せてもらおうか、「H-IIA改」の性能とやらを(3/4 ページ)

日本のロケット「H-IIA」が「高度化」と呼ぶ大型アップデートによって、「アリアン5」や「プロトン」など諸外国のロケットに戦いを挑む。アップデート初号機となる29号の機体公開から、国産ロケットの現状を読み解く。

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衛星をより良いGTOへ投入

 高度化について個別技術の詳細に関しては後編で説明したいが、主なポイントは、第2段の運用時間を大幅に延長することにある。

 静止衛星は通常、直接静止軌道まで運ばれるわけではなく、まずはその“中間地点”といえる「静止トランスファー軌道」(GTO)に投入される。GTOでロケットから分離された後、衛星は自分のエンジンを使い、自力で静止軌道まで向かう。H-IIAでは、202型だと約4トン、204型だと約6トンの衛星をGTOに投入することができる。

 このGTOであるが、赤道上空にただ1つしかない静止軌道とは異なり、じつは何種類も存在する。同じ「GTO」という呼び方であっても、軌道の傾斜角や高度などは、ロケットによってさまざま。GTOが違うと、衛星の静止化に必要な燃料の量が変わってくる。条件が悪いGTOからだと、燃料を余分に使うことになるので、衛星の寿命が短くなってしまう。

 静止軌道まで「近い」か「遠い」かを表すのにちょうど良い指標が、GTOからの静止化に必要な増速量(ΔV)である。従来のH-IIAロケットだと、GTOの軌道傾斜角は28.5度もあり、ΔVは1800m/sと大きかった。一方、商業衛星の打ち上げで最大のシェアを誇る欧州の「アリアン5」ロケットは、赤道付近に射場があるため、ΔVは1500m/sで済む。

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H-IIAロケット 29号機の飛行計画。第2段が遠地点側まで分離せずに付いていく

 つまり、現行のH-IIAで打ち上げられると、アリアン5の場合に比べて、衛星は300m/sだけ余分に増速する必要があるわけだ。これは衛星の寿命にすると数年に相当する。ロケット側で増速し、アリアン5と同等のΔVにすることもできるが、その場合は打ち上げ能力が半減。すると、204型でも約4.9トンの同衛星が打ち上げられなくなる。

 打ち上げ能力を落とさずΔVを小さくするためには、効率の良い遠地点側で第2段のエンジンを噴射すればいい。しかし現行のH-IIAでは、第2段の運用時間が足りないため、これが不可能だった。そこで高度化H-IIAでは、第2段を改良。運用時間を延ばし、再々着火を可能とすることで、遠地点側でも噴射できるようにした。

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従来は太平洋上で衛星を分離していたが、29号機は南米上空になる

 現行のH-IIAでは近地点付近で第2段エンジンの2回目燃焼を行い、その後、衛星を分離。標準的なGTOは、軌道傾斜角が28.5度、近地点高度が250kmだった。高度化H-IIAでは、2回目の燃焼の後、約4時間の慣性飛行を続け、遠地点の近くで3回目の燃焼を実施。軌道傾斜角20度、近地点高度2700kmのGTO(ΔVは1,500m/s)に衛星を投入する。

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