Googleが街を再構築する〜街のIoT化がもたらすもの〜:Sidewalk(4/5 ページ)
「都市生活の改善」を掲げるGoogleが立ち上げた「Sidewalk Labs」だが、詳細は明かされていない。しかし、「LinkNYC」などさまざまな取り組みを重ね合わせるとその狙いが透けて見える。
期待されるスマートシティへの展開
冒頭で説明したように、Sidewalkが掲げるミッションは技術を活用した「都市運営の効率化」だ。クルマやごみ箱など、街中のあらゆるモノにセンサーを搭載し、Linkと通信させることできれば、渋滞情報やゴミ回収の効率化やゲリラ豪雨の検知、ヒトやクルマの交通量調査など「街」に関するさまざまな情報を収集し活用することが可能となる。
つまり情報技術を活用して、街づくりやそこに住む人々の生活を一変させる可能性があるということだ。大げさにいえば街の再構築といってもいいだろう。
実際に先行する事例がある。米AT&Tは、ごみ箱に移動体通信モジュールを搭載することで、ごみが一定量に到達した段階でその情報をごみ収集業者に通達するソリューションを提供している。これにより、定期的な回収は不要となることからコストに削減につなげることが可能となる。
スペインのバルセロナ市においても、行政主導でWi-Fiを用いたスマートサービスを街向けに展開している。センサーで得た交通量に関する情報を元に街灯の明るさを調整する「スマートライティング」や駐車場の空き情報を伝えることで渋滞緩和と効率的運用を目指す「スマートパーキング」、バスの運行情報や行政情報、広告等を配信する「スマートバスストップ」など、さまざまなサービスが展開されている。
少し変わった取組みとしては、ポルトガルの新興企業Veniamが、ポルトガル第2の都市であるポルトにおいて、600台以上のバスやタクシー、ゴミ収集車などにWi-Fi関連機器を搭載することにより「動くWi-Fiスポット」を実現している。
クルマが動き回ることにより、街中を面でカバーする無料Wi-Fiネットワークを観光客や市民に対して提供している。現在、毎月約7万人が同ネットワークを利用しており、同市におけるインターネットトラフィックの約5割、さらに多いときで8割を担っているとのことだ。
Veniamの取り組みは一見すると、住民や来訪者に対して、無料Wi-Fiを効率的に提供する仕組みにあるように受け止められるかもしれない。しかし、同サービスの本質は、市の効率運営にあると考えられる。
センサーとWi-Fiを搭載したゴミ箱を街中に置き、Veniamのサービスと組み合わせれば、ゴミ箱の容量を検出して回収時期を検知するサービスが構築できる。今後はクルマに搭載されたセンサーが収集した情報を用いて、道路補修が必要なカ所を特定する他、バスルートの最適化や区画整備等街づくりにも活用されることも検討されている。
また同サービスは2015年より米国ニューヨークやサンフランシスを含む大都市でも展開予定となっている。さらに、人々が持つAndroidデバイスやAndroid Auto搭載車とLinkとの連携も考えられ、ウワサされているUber対抗の自動運転タクシーの制御などへの用途も考えられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.