トヨタの最新クリーンディーゼルはなぜ圧縮比が15.6なのか:エコカー技術(4/4 ページ)
トヨタ自動車が2015年6月に大幅改良した「ランドクルーザープラド」に採用したクリーンディーゼルエンジン「GDエンジン」の圧縮比は15.6である。これは、マツダの「SKYACTIV-D 2.2」の14.0と比べると幾分高い値だ。その理由は「世界中のお客さまに使っていただくため」だった。
尿素SCRシステムはデンソーと共同開発
ディーゼルエンジンの排気ガスには、微粒子(PM)やNOxといった有害物質が含まれている。これらの有害物質を大気中に出さないようにするには触媒システムが必要になる。
GDエンジンの触媒システムは、酸化触媒(DOC)、PMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、NOxを分解する後処理システム(DeNOx)という3つの要素から構成されている。これら3つの要素を、排気ガス規制をはじめとする世界各地域それぞれの需要に適合するよう組み合わせて提供することになる。
国内向けのランドクルーザープラドに搭載されたGDエンジンでは、DeNOxとして尿素SCR(選択触媒還元)システムを採用している。尿素SCRシステムは、Daimler(ダイムラー)やBMW、Volkswagen(フォルクスワーゲン)グループのディーゼルエンジン車に用いられているが、こられはほぼRobert Bosch(ボッシュ)製だ。
GDエンジンの尿素SCRシステムは、トヨタ自動車とデンソーの共同開発となっている。尿素水を噴霧するインジェクタは、ガソリンエンジンのポート噴射インジェクタをベースに開発した。噴霧した尿素水を触媒に拡散する分散板は、尿素水の微粒化や、排気ガスと尿素水の混合を促進できるような構造に最適化されている。
尿素水の交換は走行距離1万5000km当たりに1回なので、一般的な利用であれば2年に1回くらいのペースになる。「エンジンオイルと同じように、車両整備のタイミングで交換するイメージだ」(濱村氏)。
尿素SCRシステムの開発だけでなく生産も担当しているデンソーは、ボッシュとクリーンディーゼル分野で激しく競合している。これまでほぼボッシュの独占状態にあった尿素SCRシステムを製品ラインアップに加えられたことは、クリーンディーゼル分野の事業展開にとって大きな意味を持つ。
例えば、大型車や商用車のディーゼルエンジン車の場合、排気ガス規制対応のために尿素SCRシステムを採用することが多い。これまでは、基本的にボッシュ製しか選択肢がなかったが、今後はデンソーも今回の技術をベースにすれば製品提案が可能になるとみられる。
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