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基幹業務を担う病院情報システムの仕組み医療機器開発者のための医療IT入門(1)(2/4 ページ)

医療機器がネットワークを介して病院内外の医療情報システムと連携することは当たり前の時代になった。本連載は、医療機器開発者向けに、医療情報システムに代表される医療ITの歴史的背景や仕組みを概説する。第1回は、病院内の基幹業務を担う病院情報システム(HIS)だ。

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診療/介護報酬請求とひも付いた医事会計システム

 日本の医療機関にコンピュータシステムが導入されたのは1960年代。医事会計の計算処理向けに集中制御型のメインフレームやオフコンが利用されたのが最初である。

 1990年代には、クライアント/サーバシステムへのダウンサイジングが進み、UNIXやWindows OSが採用されるようになった。開発言語も、COBOLやC言語から、Visual Basicに代表されるWindows系、Java系へと広がってきた。

 通常、医療機関では、1カ月分の保険診療したものを診療報酬明細書(レセプト)に記載して点検を行い、翌月10日までに、社会保険診療報酬基金または国民健康保険団体連合会(国保連)に提出する。このようなレセプト処理を電算化した専用システムが、レセプトコンピュータ(略称レセコン)である。特に小規模病院や診療所では、ハードウェアとOS、アプリケーションソフトウェアを一体化した形態で医事会計システムが導入されてきたいきさつがある。

 また、紙レセプトによる診療報酬請求を、オンラインもしくは電子媒体に収録したレセプトで提出するのが、レセプトの電子化である。2015年4月からは、原則として電子レセプトによる請求となっている。

 支払基金または国保連の審査委員会は、提出されたレセプトの記載内容について審査を行う。診療内容が適切でないと判断された場合は減点し、診療行為の適否判断が難しい場合は医療機関に差し戻して再提出を求める。このような審査を経た後に、支払基金/国保連は各医療保険者に対して支払請求を行い、保険者が審査した上で診療報酬の支払額が確定する。

 診療報酬の確定額分は、保険者から支払基金または国保連を介して医療機関に払い込まれる。医療機関側からみると、診療報酬請求から入金までの約2カ月間、収支にズレが生じることになり、その間のキャッシュフロー管理も医事会計上重要となる。

 なお、診療報酬および薬価基準の改定は通常2年に1回で、4月1日付で施行される(例:2012年4月、2014年4月、2016年4月、2018年4月)。その決定に至るまでの間、中央社会保険医療協議会(中医協)の議論があり、2月下旬に厚生労働大臣からの諮問を受けて答申され、告示となる。

 診療報酬点数の改定値が告知されてから施行までの1カ月の間に、医事会計システムの修正作業を行わなければならない。それと同時に、医療機関の経営者は、診療報酬改定による自施設への影響を調査・分析して、今後の施設経営戦略に反映させなければならない。

 加えて、医療機関が介護保険制度に基づくサービスを提供している場合、1カ月分の介護報酬を介護給付明細書に記載して点検を行い、翌月10日までに、電子媒体による請求を国保連に提出する。診療報酬請求の場合と同様に、国保連の審査委員会が介護報酬に対する審査を実施して、介護保険者である各市区町村に対して支払請求を行い、市区町村が審査した上で介護報酬の支払額が確定する。介護報酬請求から入金までの約2カ月間、収支にズレが生じる点も同じである。

 介護報酬の改定は通常3年に1度、4月1日付で施行される(例.2012年4月、2015年4月、2018年4月、2021年4月)。介護報酬点数の改定値が告知されたら、診療報酬とは別個に、医事会計システムの修正作業を行わなければならない。全国の医療機関が同じタイミングで、2年サイクルの診療報酬改定と3年サイクルの介護報酬改定に合わせたシステム修正作業を実施しなければならない点が、医療ITの特徴であり、リソース上の課題にもなっている。

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