2020年に自動車1台当たり19個載るイメージセンサー、裏面照射型が鍵を握る:車載半導体(3/3 ページ)
車載CMOSセンサーで50%近いシェアを握るオン・セミコンダクターによれば、2019〜2020年には自動車1台当たりに19個のイメージセンサーが搭載されるようになるという。同社は、成長著しい車載CMOSセンサー市場での優位を確保すべく、裏面照射型の新製品を投入する。
裏面照射型車載CMOSセンサーの新製品は「競合他社より高性能」
オン・セミコンダクターでは、バックモニターやサラウンドビューなど向けを「ビューイング」、自動ブレーキやクルーズコントロールなどの運転支援システム向けを「ADAS(高度運転支援システム)」として分けている。
この分け方は、各国地域における自動車安全に関わる法制度によって、ビューイングとADASの需要トレンドが異なるからだ。例えば、欧州はADAS重視だが、北米と日本はビューイング重視だという。
今後の車載イメージセンサーの成長をけん引すると見られるのがADASである。2019年に駐車支援と照明システムのシェアが低下するのは、ADASである自動ブレーキ向け距離検知や白線認識に使う車載イメージセンサーの市場規模が半分近くを占めるようになるからだ。
オン・セミコンダクターはADAS向けに、画素数1.2Mピクセル(1280×960画素)の車載CMOSセンサー「AR0132AT」を2013年から量産している。実際に、車載カメラを用いた運転支援システムのサプライヤであるMobileyeの「EyeQ3」プラットフォームに標準採用されている。同社の試算によれば、AR0132を中心にADAS向け車載CMOSセンサーのシェアは70%に達するとしている。
ただし、競合他社も指をくわえて見ているだけではない。オムニビジョンは2014年5月に「世界初」とする裏面照射型の車載CMOSセンサーを発表(関連記事:車載CMOSセンサーで「業界初」の裏面照射型、オムニビジョンがADAS向けに開発)。ソニーも、2014年11月に「世界最高感度」をうたう車載CMOSセンサーを発表している(なお、このCMOSセンサーは表面照射型である)。
オン・セミコンダクターも、競合他社に対抗すべく裏面照射型の新製品を開発した。2015年7〜9月期にサンプル出荷を始め、2016年初には量産を開始する「AR0136AT」である。
AR0136ATの画素数はAR0132ATと同じ1.2Mピクセルだ。しかし、表面照射型のAR0132ATに対して、AR0136ATは裏面照射型となっており、感度やSN比が大幅に向上している。可視高感度がAR0132AT比で40%、低照度環境におけるSN比が同4倍以上、近赤外線性能が60%以上向上している。
また、高い採用実績を誇るAR0132ATとの間で、端子互換とレジスタコントロール互換を確保している。例えば、AR0132ATを採用するMobileyeであれば、CMOSセンサー部のプリント基板の設計や制御プログラムを変更することなく、より高性能のAR0136ATに置き換えられるというわけだ。
ウィリアムス氏は、「表面照射型の車載CMOSセンサーでは競合他社を上回る性能によって評価を受けた。裏面照射型の車載CMOSセンサーで市場投入では競合他社が先行したが、AR0136ATの性能はそれを上回る。AR0132ATからの移行が容易なことも含めて、拡売していきたい」と述べている。
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