「受注生産」から「ライン生産」へ、新ロケット「H3」は商業市場に食い込めるか:宇宙開発(2/3 ページ)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が新型基幹ロケット「H3」の概要を公開した。シミュレーション解析や民生部品の活用などでコスト低減を進め、商業打ち上げ市場に食い込むべく「事業開発ロケット」と位置付けるが、官需からの脱却に成功するかは不透明だ。
H3のコスト低減策
そのため、H3ロケットではコンセプトを根本から見直し、大幅なコストダウンを狙う。
まずコストの大きな要因となる第1段エンジンには、新開発の「LE-9」エンジンを採用する。これはH-IIA/Bの第2段エンジンLE-5Bと同じ「エキスパンダーブリード」サイクルのエンジンで、簡素かつ安全性が高いという特徴がある。
LE-9では、エンジン設計に数値シミュレーションを活用する新たな開発手法を導入。従来は、設計して製造した後、燃焼試験を行ったところで初めてトラブルを見つけることができたが、要素試験やシミュレーションで危ない部分を可能な限り解消しておき、試験の段階ではなるべく問題が起きないようにしたそうだ。
SRBも大幅に改良する。コアロケットへの取り付けには、現在は「スラストストラット」という骨組みが使われているが、より簡素な結合分離機構に変更する。またモーターケースは海外からのライセンス生産になっていたが、これを国産化することで低コスト化を図る。推力は220トンと同等だが、振動の低減も考えられている。
その他、低コストの製造・運用コンセプトを設計段階から取り入れ、機器・部品の共通化、作業工程の効率化なども図る。従来は「受注生産」のイメージだったが、H3ロケットでは機体のモジュール化を進め、「ライン生産」のイメージに近づけるという。また電子部品では、高価な宇宙用部品の使用を抑え、民生品を積極的に採用する。
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