「受注生産」から「ライン生産」へ、新ロケット「H3」は商業市場に食い込めるか:宇宙開発(1/3 ページ)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が新型基幹ロケット「H3」の概要を公開した。シミュレーション解析や民生部品の活用などでコスト低減を進め、商業打ち上げ市場に食い込むべく「事業開発ロケット」と位置付けるが、官需からの脱却に成功するかは不透明だ。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2015年7月8日、現在開発が進められている新型基幹ロケット「H3」に関する記者説明会を開催、ロケットのコンセプトなどについて説明した。
H3ロケットは、現行「H-IIA/B」ロケットの後継機。高い信頼性を維持しつつ、打ち上げコストを半減させることで、国際競争力のあるロケットを目指す。初飛行は2020年度になる見通し。
H3ロケットは現在、基本設計の段階で、最近まで第2段エンジンの種類や基数も決まっていなかったが、現行「LE-5B」エンジンの改良型を1基搭載することになり、ロケットの全体像がほぼ固まった。ロケットの名称もこれまでは「新型基幹ロケット」とだけ呼ばれていたが、2015年7月2日に「H3」に決まったことが明らかにされている。
H3ロケットの全長は約63mで、コアロケット(1段+2段)の直径は約5.2m。衛星の大型化に対応するためフェアリングが大きくなったこともあり、これまでの日本最大ロケット「H-IIB」から、さらに6mほど背が高くなった。
大きな特徴は、第1段エンジンの搭載数を2基または3基から選択できるということ。これまでのHシリーズでは、推力を補助する固体ロケットブースタ(SRB)が必須だったが、エンジン3基を選んだ場合、米国の「Delta IV」ロケットのように、SRB無しで打ち上げることも可能になる。SRBを搭載する時は、2本または4本から選ぶことができる。
SRB無しの最もシンプルな形態の場合、打ち上げ能力は太陽同期軌道(SSO)に4トン以上(高度500km時)。またSRBを4本フルに搭載すれば、静止トランスファー軌道(GTO)に6.5トン以上の打ち上げが可能になる。SRB搭載時の打ち上げコストは明らかにされていないが、SRB無しのときは約50億円と、H-IIAの半額程度にまでコストダウンする計画だ。
日本は初の純国産大型液体ロケットH-II(1994〜1999年)を開発し、改良型のH-IIA(2001年〜現在)で低コスト化を実現したが、それでも海外のロケットに比べると高く、衛星の商業打ち上げ市場にはほとんど食い込めていない。円高が解消され、カナダTelesat社から通信放送衛星の打ち上げを受注したものの、現行ロケットのままでは競争力には限界があった。
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