レーザー、電子ビーム、インクジェットなど各方式の金属3Dプリンタが大集結!:DMS2015リポート【3Dプリンタ編】(3/3 ページ)
「第26回 設計・製造ソリューション展(DMS2015)」では、各方式の金属3Dプリンタが注目を集めていた。「最終製品への活用」をキーワードに各社の金属3Dプリンタおよび関連サービス、位相最適化ツールなどをリポートする。
小ロット品を低コストで作れる「マイクロ波造形」
小ロットの製品を低コストで作れる「マイクロ波造形」技術を紹介していたのがアトラスだ。
まず、光造形などでマスターモデルを作った後、シリコンゴムで型を取り、樹脂ペレットを充填(じゅうてん)し、マイクロ波で加熱溶融して型から抜く。射出成形と同じ材料が使え、PC用マウスを10個製造した場合、約30万円。納期は10日程度だとしている。リペアパーツ製作などの用途でも考えられるとのことだ。
また、ユニークな溶接積層造形を紹介していたのが愛知産業である。オーストリアのフローニアス社製のCMT溶接機で、切削加工のように材料がムダにならないため、「大型のものを速く作る用途に向く」(愛知産業)という。例えば、大きなパーツ上に直接筒を作り付けるといった使い方もできるという。
生産工程で使用する冶具などの造形サービスも
アルテックのブースでは、リコーと共同で展開するコンサルティングサービスを紹介していた(関連記事:アルテックとリコー、3Dプリンタを活用したDDMのメリットを訴求)。工場の工程改善を想定した冶具などの3Dプリンタ出力事例を披露していた。
以下の画像は、実際に生産現場で使われる製品の検査用カメラである。
従来であれば、金属パーツやプラスチック板などを組み合わせて手作りしていたが、材料や形状の選択肢がなく、重量も重かった。右上は形状などを変更せず、素材を置き換えて、卓上タイプのFDM方式3Dプリンタで製造したものだ。右下は3次元CADで3Dプリンタならではの形状に設計し直してパーツを一体化し、不要部分の肉抜きを行ったもの(製造装置はDimension Ellite、材質はABS-M30)。従来の500gから200g弱にまで軽量化できたという。検査装置などは軽ければ軽いほど良いとされ、現場の負担を減らすのに大きく貢献できるとしている。
「3Dプリンタがあればこういったことができる。しかし、生産現場の人は3次元CADでの設計ができず、3Dプリンタもすぐ使いこなせるとは限らない。そこでまずはこれらをサポートし、必要に応じて購入の案内などをしている」(説明員)。
3Dプリンタならではの形状設計が重要に
3Dプリンタを利用する際にメリットとなってくるのが、従来の工法では不可能だった形状の製作だろう。こういった形状にできれば材料を減らせる、また部品点数を減らせるといったことが、3Dプリンタで実現できる可能性がある。
例えば、必要な強度を保ちつつ材料の量を最小限に抑えるような形状を計算できる位相最適化のソフトウェアは前からあったが、「出てきた形状は従来の製法で作れるとは限らないため、新しいアイデアを設計に取り込むためのものという側面が強かった。しかし、金属やエンジニアリングプラスチックなど材料の幅も広がってきて、実際に位相最適化によって導き出された形状を直接製品化することが可能になってきた」(マテリアライズジャパン)。
なお、位相最適化形状が使えるようになったといっても直接の利用は難しいため、マテリアライズジャパンでは、STLベースのサーフェス編集ツール「3-matic(トリマティック)」を提供している。このツールも従来は、光学スキャンデータや医療データの修正、解析用データの作成などに使われていたという。最新バージョンでは、アルテアと緊密に連携しながらトポロジー最適化を意識した製品として開発したという。
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