充実する国内充電インフラ、「電動車両第2世代」投入の舞台は整った:和田憲一郎の電動化新時代!(15)(2/5 ページ)
ここにきて電気自動車/プラグインハイブリッド車といった電動車両用の充電インフラが総合的に充実しつつある。日本充電サービス、チャデモ協議会、電動車両用電力供給システム協議会という、充電インフラに関わる3つの企業・団体への取材により、2016〜2020年にかけての投入が予想される「電動車両第2世代」投入の舞台が整いつつあることが分かった。
NCSの充電ネットワークサービス利用者は数万+数百!?
和田氏 NCSカードを発行しているとのことだが、現在の発行枚数はどれくらいか。また各自動車メーカーからも独自のカードが発行されているがこちらはどうか。
羽野氏 2014年10月の充電ネットワークサービス開始以降、1枚のカードで全国各地の充電器を利用できる利便性の高い会員カードが自動車メーカー各社から提供されている。その後NCSカードも、2015年1月から募集を開始しており、海外メーカーなど単独の自動車メーカーでは訴求しづらいの電動車両ユーザーの方々数百人に使ってもらっている。
自動車メーカーなどの会員カードは、それぞれ独自の付加価値プラン、例えば車両メンテナンスなども含むサービス付きのカードとして数万枚が発行されている。NCSの活動は、充電ネットワーク事業者として各カード発行会社に充電インフラ環境を提供している側面と、NCSカードの発行者としてユーザーに直接サービスを提供している側面とがある。どちらも、電動車両ユーザーの利便性向上を目指し、インフラを維持醸成していく上で必要なことと考えている。
和田氏 どのようなユーザーがNCSカードに入会しているのか。
村田氏 繰り返しになる部分もあるが、国産自動車メーカーの電動車両にお乗りのお客さまはNCSの充電ネットワークが使える各自動車メーカーのカードに入会されるケースが多い。しかし海外自動車メーカーの電動車両に乗られているお客さまは、NCSカードを活用いただいているケースが多い。
2015年5月末から開始した「一般提携契約」とは
和田氏 2015年5月末から「一般提携契約」の募集を開始したが、状況はどうか。
羽野氏 一般提携契約とは、主に政府の補助金を活用して充電器を設置/運用する設置者向けに、NCSの充電インフラネットワークと提携していただくためのプログラムだ。提携により、NCSのネットワーク情報を通じてより多くの電動車両ユーザーに、その充電器の存在を知らせることができる。また、会員の充電器利用にかかる電気代については、利用実績に応じてNCSから設置者に支払うことにしている。2015年度で最も力を入れている取り組みと言っていい。
一般提携契約の条件に賛同いただいた設置者とは1年ごとの更新契約を想定している。2015年5月27日から開始したばかりなので、現在NCSのWebサイトや経済産業省などが開催する説明会、充電器メーカーなどを通じてPRしているところだ。
和田氏 チャデモ協議会によれば、日本国内の電動車両用急速充電器の設置数は2015年5月末で5400基を超えたとのこと。NCSネットワークに属する急速充電器の数はどれくらいか。
山田氏 足元の稼働ベースで約3000基である。しかし2015年末には、急速充電器と普通充電器を合わせて全国約1万1000基の大規模な充電インフラが整う予定だ。NCSのネットワークは、2015年末に向けて規模が拡大していくプロセスに入っており、チャデモ協議会で把握している全国の設置数とは、統計をとるタイミングによって発生する差異が出てくると推察している。
和田氏 NCSとしての課題はどのようなものがあるか。
山田氏 会社が発足して約1年となるが、充電ネットワークのサービスを提供していくための設置、保守メンテナンス、電気代などコスト全般の負担が大きいと感じている。今後持続的な充電インフラネットワークを作るために必要な支出と、電動車両への充電によって便益を受けるお客さまからいただく収入のバランスがまだ取れていないと考えている。
社会インフラを醸成していく過程では、業界全体によるコスト低減に向けた取り組みが不可欠である。また一方で、充電インフラネットワークを利用するユーザーの視点に立つと、充電器を操作するパネルなどのインタフェースの標準化など使いやすさも肝要だと認識している。充電インフラの充実と充電コストの低減への取り組み、使いやすさの向上によって、電動車両ユーザーに安心して使ってもらえるようなネットワークを作ることで、電動車両のさらなる普及拡大につながっていくと考えている。
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